深地層研究計画の状況

令和2年11月の調査研究の状況

令和2年11月27日(金)更新

「地下水の流れが非常に遅い領域を調査・評価する技術の高度化」
幌延深地層研究センター周辺における物理探査の実施状況 その2

幌延深地層研究センターの周辺(幌延町北進地区)において、地下水の流れが非常に遅い領域を調査・評価する技術の高度化の一環として、約3km四方を調査エリアにおいて2種類の物理探査を実施しました。10月6日から23日にかけて実施した反射法地震探査に引き続き、10月20日から11月13日にかけて地下深部における化石海水の拡がりを推定するための電磁探査を実施しました。
 化石海水は、地層中に取り込まれて長期間かかって変質した古い海水のことで、化石海水の存在は地下水の流れが非常に遅いことを示す証拠になると考えられています。淡水に比べると化石海水は塩分が多く含まれており、電気が流れやすい傾向があります。電磁探査は地下深部の電気の流れやすさの分布を調べることができることから、化石海水の分布を推定できることが期待されます。
 電磁探査の現地調査では、センター周辺において全部で60箇所に順次測定器を設置し、1箇所につき5日間程度の測定を行いました。測定はノイズが少ないと考えられる夜間に自動で行い、地下の微弱な電流と磁気の変化を測定しました。測定器設置の際、測定場所ごとに手作業で地面に穴を掘り、測定器を埋めました(写真)。測定終了後は、測定器を掘り出し、元通りにしました。
 今後は、取得したデータを用いて解析を行い、地下深部の電気の流れやすさ(比抵抗)の分布および化石海水の拡がりを推定する予定です。また、事前に行った反射法地震探査の解析結果と比較することにより、地質構造分布と化石海水分布の関係性を検討します。

  • 測定器(磁気センサー)の設置作業中の様子
  • 測定器(磁気センサー)の設置後の様子

写真 測定器(磁気センサー)の設置作業の様子 左:設置作業中 右:設置後(測定中)

写真をクリックすると大きなサイズで写真をご覧いただけます。

令和2年11月27日(金)更新

深部地下水中に存在するコロイドに関する調査

日本原子力研究開発機構は、一般財団法人電力中央研究所と塩濃度の高い地下水中に安定に存在する※1コロイド※2種に関する調査と、コロイドへの放射性核種の不可逆的な収着挙動※3についての把握を目的として共同研究を行っています。本共同研究は実際の地下水を用いた研究であり、令和2年11月9日から11日の日程で、幌延深地層研究センターの地下140m、250m、350m調査坑道に掘削したボーリング孔から地下水を採水しました(写真)。このような深部の地下水は、酸素がほとんど無い環境にあるため、大気と触れてしまうと新たなコロイドが生成してしまう可能性があります。このため、地下水が大気と触れない方法で採水をしました。
 今後、コロイドの大きさ、形状や構成元素に関する情報を取得するために、得られた地下水試料を複数のフィルタでろ過し、ろ紙を電子顕微鏡などで観察・分析します。これらの情報は、核燃料サイクル工学研究所および一般財団法人電力中央研究所において放射性核種の収着試験を実施する際や、幌延深地層研究センターが進める必須の課題である物質移行試験におけるコロイド影響を評価する際の重要な基礎情報になります。

※1 安定に存在するとは
 一般的にコロイドは塩濃度が高くなると沈澱しますが、本研究では塩濃度の高い地下水中でも沈澱せずに存在するコロイドを調べます。

※2 コロイドとは
 大きさが1nm(0.000001mm)~1µm(0.001mm)の粒子が水などの液体中に浮遊し、容易に沈まない状態を指します。

※3 不可逆的な収着挙動とは
 本研究では、放射性核種がコロイドに吸着した場合、剥がれない(剥がれにくい)放射性核種が存在するかどうか確認します。

※4 Ar(アルゴン)ガスとは
 Arガスは不活性であり、地下水に含まれる物質と化学反応しません。

地下水の採水作業の様子

写真 地下水の採水作業の様子

写真をクリックすると大きなサイズで写真をご覧いただけます。

令和2年11月20日(金)更新

緩衝材流出試験
(原子力環境整備促進・資金管理センターとの共同受託研究)

原子力環境整備促進・資金管理センター(以下、原環センター)と原子力機構は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業「令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(ニアフィールドシステム評価確証技術開発)」を共同で実施しています。
 現在350m調査坑道にある試験坑道5では、緩衝材流出試験を実施しています(図1)。粘土でできている緩衝材ブロック(8個でドーナツ状の一段を構成し、これを5段積み重ねたもの)(写真1、2)を地下水が流れ出ている試験孔内(直径約58cm)に設置しました(写真3)。緩衝材ブロックに地下水が浸み込むと、緩衝材ブロックは試験孔壁(岩盤)との間にある隙間(約2㎝)を塞ぐように膨らみます。膨らんだ緩衝材ブロックの表面部分は、地下水の流れにより流出するため、地下水の排水量と緩衝材の流出量を計測します。また、緩衝材内に設置した圧力計や荷重計で、緩衝材ブロックの試験孔内での状況を計測します。これらの計測結果をもとに、緩衝材の流出挙動を把握していく予定です。

流出試験の概要

図1 流出試験の概要(断面図)。岩盤から流れ出てくる地下水(青色矢印)と接触して膨らんだ緩衝材の表面部分は、地下水の流れにより流出する。コンクリート壁の中に排出された地下水が集められ(青色点線矢印)、汲み上げて(黄色矢印)地下水の排水量と緩衝材の流出量を測定する。

緩衝材ブロックの積み上げ状況

写真1 緩衝材ブロックの積み上げ状況

緩衝材ブロックの積み上げ状況

写真2 試験装置への緩衝材ブロック(8個を5段)の設置状況

試験孔への試験装置の設置状況(試験開始時)

写真3 試験孔への試験装置の設置状況(試験開始時)

写真をクリックすると大きなサイズで写真をご覧いただけます。

令和2年11月13日(金)更新

幌延町内における地表でのガス測定調査

幌延深地層研究センターは、公益財団法人深田地質研究所および国立大学法人東京大学との共同研究の一環として、メタンガスの濃度分布から断層などの位置を推定する技術の適用性を確認するため、令和2年10月15日から18日の日程で、幌延町北進地区および上幌延地区、開進地区の断層が分布する区域において、新しい分析技術を備えた分析装置を用いた地表でのガス測定調査を実施しました。
 大気中のメタンガス濃度は約2ppm*1ですが、これに断層から放出されたメタンガスが加わった場合、大気中のメタンガス濃度の変化量は0.1ppm以下となることから、地表でメタンガスによる断層分布を迅速に把握するためには、このようなごく微小な変化を迅速に捉える分析技術が必要になります。
 調査では、分析装置を車に載せ、大気中のメタンガス濃度を分析しながら道路を走行することにより(写真)、短時間で、断層が存在したための変化と考えられるメタンガス濃度の空間分布を得ることができました。

※1 ppmとは
 濃度の単位。百万分率を意味する。1%は10,000ppmと同じ濃度。

車による測定の様子

写真 車による測定の様子

写真をクリックすると大きなサイズで写真をご覧いただけます。

これまでにご紹介した調査研究の状況

Copyright(C) Japan Atomic Energy Agency. All Rights Reserved.