平成18年2月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
日本海の人工放射性核種分布マップを作成
−日本海における放射性核種移行の特徴を解明−

 
 日本原子力研究開発機構【理事長 殿塚猷一】(以下「原子力機構」)は、海水循環及び物質移行のプロセス解明などを目的に、ロシア側排他的経済水域を含む日本海海洋調査を1994年から10年間に渡って実施し、今般、日本海の人工放射性核種分布マップを初めて作成するとともに、日本海における放射性核種移行の特徴を解明した。

 原子力機構における日本海海洋調査は、1994年と95年の日韓露共同海洋調査に始まった。その後、原子力機構では、むつ事業所を拠点として、国際科学技術センター(ISTC)パートナープロジェクト、文部科学省からの受託調査及び北海道大学・九州大学との共同研究により、日本海のロシア側及び日本側排他的経済水域内の調査を継続しできたが、これまでの調査航海で、現時点で調査可能な海域をほぼ網羅することができた。

 本調査の結果、以下の点が明らかになった。
 1) 日本海の放射性核種濃度の分布には地域及び水深によって差が見られ、北西部では放射性核種が南東部に比べ中・深層まで達しており、さらに中・深層における海水流動により日本海盆から大和堆を迂回して大和海盆へ舌状に浸入する特徴を呈する(参考図1)。この日本海北西部での放射性核種の中・深層への輸送には、海水の冬期冷却による沈み込みが重要な役割を果たしている。
 2) 海水中の沈降粒子を指標とした解析結果から、放射性核種の海底への輸送には、アジア大陸から大気経由で降下した黄砂粒子とともに、東シナ海や日本列島から水平輸送された粒子が寄与している(参考図2)。
 3) 日本海の海水及び海底土で検出された人工放射性核種は、核実験フォールアウトに起因するものであり、その濃度は人体に影響のないレベルであった。

 上記の結果は、ロシア側排他的経済水域を含めた18回に及ぶ調査航海により初めて明らかになったものであり、日本海の海水循環や物質移行のプロセス解明に役立つ貴重な情報を提供するものである。また、放射性廃棄物の海洋投棄の監視や、放射性核種放出事故に対する原子力防災対策実施の際に、それ以前の放射性核種分布状況を知るための重要なデータとなる。なお、原子力機構では、日本海海洋調査の研究成果をまとめた研究レポート(英文)を平成18年2月に刊行した。


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