The Radiation Odyssey

STAGE5 放射線の利用

農業・工業分野での放射線利用

農業分野での利用
放射線は植物の品種改良にも利用されています。
茨城県にある放射線育種場ではコバルト60を線源として、突然変異を利用した作物の品種改良、及びその効率的誘発のための基礎研究を行っています。
この研究により「イネの半モチ・低アレルゲン・低蛋白・無毛などの新しい突然変異体」「イネやオオムギ等の耐倒伏性・多収穫・病害虫抵抗性の改良」「二酸化窒素を多く吸収するイタビ」「キクの新品種」などの成果が上がっています。

近年では「重イオンビーム(重粒子線)」が新たな変異誘発技術として注目されています。理化学研究所は様々な生物への重イオンビーム効果について検証を行っており、突然変異誘発に関する数々の研究成果をあげてきました。重イオンビームは照射量が少なく、変異率が高く、変異のバリエーションが多いのが特徴です。 2001年に新色のダリアが、2002年には不稔化バーベナが世界初のイオンビーム育種の成果として市販されました。それ以降「耐塩性のイネ」「背が低くて倒れにくいソバ」「枝にとげがなく収穫が楽なミカン」「実が黄色く苦みがないピーマン」なども生まれています。

放射線は害虫駆除にも利用されています。
南西諸島にはウリミバエというゴーヤやスイカ等に卵を産み付けて繁殖する害虫がいるために、他の地域に作物を出荷できませんでした。
しかし、放射線で不妊化したウリミバエを大量飼育して野外に放つことで、野生虫同士の交尾頻度を下げて次第に数を減らしていき、ウリミバエの根絶に成功しました。これにより沖縄近辺でとれた作物を他の地域に出荷できるようになりました。
この方法は「不妊虫放飼法」と呼ばれており、同様にサツマイモのアリモドキゾウムシとイモゾウムシの駆除にも応用されています。また、この方法を用いて病原菌を媒介する昆虫の根絶も取り組まれています。

工業分野での利用
放射線は工業分野にも応用されています。私たちの暮らしの中には、繊維類・合成樹脂などの高分子化合物が、天然・人工を問わず多く用いられています。これらに放射線を照射することで、素材の性質を強めたり弱めたりすることができます。この技術を応用して、クリーンなプラスチックや傷・火傷のカバー材、高強度のラジアルタイヤの製造などに利用されています。今後は大量の水を含む親水性のプラスチックへの応用も進み、人工角膜や人工血管、ソフトコンタクトレンズといった生体材料や高機能材料への応用も期待されています。電子照射は、溶剤を使わず(無公害)、速く(高生産性)、常温で(省エネルギー)下地の上に高品質のプラスチック硬化塗膜を作ることができるので、紙容器オフセット印刷や、フロッピーディスク、トンネル内包材、防曇フイルム、マスキングテープ、感熱紙の製造などにも応用されています。

参考資料

■日本原子力研究開発機構 JAEA ホームページ
■理化学研究所 ホームページ
■原子力技術研究所 放射線安全研究センター ホームページ

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