112 1F廃炉支える研究開発拠点
掲載日:2025年3月4日
遠隔技術・試験環境を提供
隣接地から貢献
東京電力福島第一原子力発電所(1F)の事故直後から、日本原子力研究開発機構は緊急時対応活動を開始した。その後は技術開発支援のため拠点を展開、今に至る。
そのうちの一つ、楢葉遠隔技術開発センター(NARREC、福島県楢葉町)では、遠隔操作機器の技術開発や現場投入前の事前試験などができる環境を提供している。1F構内には空間線量の高い区域が多く、特に燃料デブリ取り出しに関する作業では、被ばく低減のためにロボットなど大小さまざまな遠隔操作機器を活用しているためだ。
NARREC試験棟には、天井高40メートルでバスケットボールコート11面が収まる広大な空間(幅60メートル、奥行き80メートル)を用意。廃炉までに必要なさまざまな作業を、実寸大レベルで試験できる。1例だが、国際廃炉研究開発機構は原子炉格納容器付近の実寸大模擬構造体を配置。燃料デブリ試験的取り出しのため、「2号機用ロボットアーム型アクセス・調査装置」の実証試験を行っている。
多要素を試験
原子炉建屋内の状況確認や空間線量測定の現場では、小型、中型クラスのロボットを用いている。これらの性能評価や操作技術の向上などを目的に、要素試験設備をそろえた。陸上用ロボット向けの試験フィールドでは、階段やがれき環境での走破性能を定量評価できる。水中用ロボットには水深5メートルの水槽を用意、水温などの環境条件を制御した試験が可能だ。
さらに、物体の動きを3次元のデジタルデータ化するモーションキャプチャーを整備。遠隔操作機器の動きを数値化して精密に評価することに適している。
被ばくなく準備
別棟には3Dデジタル投影装置(VRシステム)がある。我々が構築した1―3号機の原子炉建屋内部の3Dデータの一部には、放射性物質汚染分布を重ねた投影もできる。この実寸大の仮想空間を使い、作業員が被ばくすることなく、作業手順の事前確認などを行うこともできる。
一般利用も可能で、廃炉や福島復興に関する場合、利用料は規定のほぼ半額と活用しやすくしている。
NARRECでの試験を経て、廃炉作業に投入した技術は多岐にわたる。今後は、廃炉作業の進捗に応じ、必要となる遠隔操作機器も変化するだろう。その都度、改善を繰り返し、適切な環境を提供することで着実な1F廃炉の進捗に貢献していく。