原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

099 1Fの放射性廃棄物分析

掲載日:2024年11月26日

福島廃炉安全工学研究所 大熊分析・研究センター 分析課
 田中 康之

大熊分析・研究センターでは、これらの分析手法を使った放射性廃棄物分析を本格的に開始している。今後は安定かつ継続的に分析結果を出しながら、さらなる分析手法の改善を進め、廃炉事業に貢献していく。

工程合理化、測定を迅速化

種類・量を把握

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃炉事業では、廃棄物処理・処分の長期安全性を評価するため、放射性核種の種類と量の把握が必要となっている。日本原子力研究開発機構では、これら1F廃棄物に対する複雑な分析工程を合理化することで、簡易で迅速な手法を開発。さらに、放射能測定が難しい長半減期核種に対する、高感度かつ迅速に計測できる質量分析法を基にした新規分析手法を開発した。

分析工程の見直しでは、化学分離の原理を基に分析工程を再検討し、1回の工程で逐次的に複数の核種を分離可能な手順に合理化した(図)。併せて、分析設備の主な材質がステンレス鋼であることを踏まえて、化学分離時に塩酸(HCI)を使用しない手法の確立にも着手した。

これは、設備への腐食リスクが高い塩酸を多用するのは長期的な安定運転に影響しかねないからだ。この結果として、硝酸などの腐食リスクが低い薬品を用いた新たな化学分離方法を開発した。これらにより、従来8―9日必要だった分離時間は約4日へと半減した。

新規手法を適用

半減期核種の測定では、特定の質量数の元素を高感度かつ迅速に計測する「誘導結合プラズマ質量分析(ICP―MS)」の適用を検討した。これはイオン化した元素を質量分離部位(四重極)で分ける仕組みだが、質量数が同じだと区別できない弱点があった。

廃炉事業に貢献