074 アルカリ活性材料でセシウム固定
掲載日:2024年5月21日
新しい廃棄物処理法にめど
放射性廃棄物は、セメントやガラスなどの固化材料で固化し、地中に埋設して適切に処分する計画だ。日本原子力研究開発機構では、アルカリ活性材料を用いた新しい放射性廃棄物の処理技術を開発した。成果は、国内の放射性廃棄物の処理処分技術の向上にも寄与する。
安全な処理処分
低レベル放射性廃棄物には、さまざまな性状を持つものが存在する。安全な処理処分を実現するためには、廃棄物の性状に合わせて適切な固化材料を選択することが重要だ。一方その中には、環境に有害な物質を含むものも存在する。
例えばセシウムなどの放射性元素の吸着材として広く利用されている難溶性フェロシアン化物は、有害なシアンを含むことから、処分時にはシアンを分解して無毒化することが好ましい。しかし、吸着していたセシウムがシアンの分解に伴い遊離してしまうという課題があった。
そこで原子力機構ではアルカリ活性材料に着目。アルカリ活性材料は、ケイ素やアルミニウムが主成分の無機粉体をアルカリ剤と混合することで作製可能で、ジオポリマーとも呼ばれる。材料を混ぜるだけで硬化し、ガラスのような非晶質構造にセシウムなどの元素を閉じ込めることができる特徴的な材料だ。
吸着材を処理
今回開発したアルカリ活性材料を用いた新しい処理技術では、耐熱性やセシウムの固定能を有するアルカリ活性材料の特性を活かし、セシウムが吸着した難溶性フェロシアン化物を固化した後に加熱処理。有害なシアンを分解、さらに遊離したセシウムをアルカリ活性材料で固定化できることを確認した。
私たちはこれまでに、重金属を含む廃棄物や東京電力福島第一原子力発電所の汚染水の処理に伴い発生している廃棄物などを対象として、元素の溶出特性や長期的な結晶相の変質に関する研究を実施。さらに土木学会主催の共通試験への参加などを通して、固化材料としてのアルカリ活性材料の適用性評価を進めてきた。
セメント代替
アルカリ活性材料はセメントとは異なる機構で硬化するため、セメントでは固化が難しい廃棄物を主な適用先に見据えるが、今後は固化材料にとどまらないアルカリ活性材料の新たな活用法も視野に入れている。さらなる研究開発を進め、国内の放射性廃棄物の処理処分技術の向上に貢献していく。