066 坑道の湧水減少速度に新知見
掲載日:2024年3月12日
断層内の水の「みち」が影響
掘ると出る水
日本原子力研究開発機構は、坑道を掘削する際に断層から流入する水の減少速度が、水の「みち」に影響されていることを初めて解明した。断層内には、湧水をもたらす水のみちがあり、そのみちが3次元的に構成されていると湧水量の減少は遅く、1次元的だと急激に減少することを実証した。この知見は、トンネル工事でのセメント注入の合理化にもつながる。
対策合理化可能
坑道掘削時に断層とぶつかると、地下水が坑道内に流入する。こうした場合、現場では断層内にセメントを注入し、湧水量を抑制する。しかしセメント注入はコストと時間がかかり、1カ所の工事でも1-2カ月、数千万-1億円かかることもある。この湧水量は時間とともに減少する。その減少速度が速ければ、セメント注入を省略できる。このため湧水量の減少速度を予測できれば、湧水対策の合理化が可能だ。
従来の坑道掘削時の湧水量予測では、断層内の隙間にできる水のみちはすべて3次元的なネットワーク状につながっていると仮定していた。この場合を水理学的に計算すると、湧水量は1カ月たってもほとんど減少しない。このため水が出た断層は必然的にセメント注入の対象となっていた。
けれども断層内では、水みちが曲がりくねった1次元的なチャンネル状になっているものがあることが知られていた。この場合、湧水量の減少速度は計算上、数日から数週間で2分の1-10分の1まで急激に減少する。
現場で初実証
原子力機構の幌延深地層研究センターは、そのような断層の場合、計算通りに湧水量が非常に速く減少することを実際の掘削工事の現場で初めて実証した。このことは他のトンネル工事の現場でも適用できる。湧水発生直後の水の減り具合が1次元的な水みちの場合と同程度である場合、その後の湧水量はさらに短期間で減少すると予測でき、セメント注入を省略することが可能だ。
また、この知見は高レベル放射性廃棄物の地層処分場でも役立つ。廃棄体の保護や坑道の閉塞に用いる粘土材料が湧水によって流されないようにするための対策も、湧水量の減少速度が予測できれば、より合理的な方策をとることができ、効率的な湧水対策に大いに役立つことが期待できる。