001 原子力とは何か。
掲載日:2022年11月15日
日常生活で身近に活用
幅広く研究開発
世の中には原子力=原発という強いイメージがある。その原子力の研究開発を担う日本原子力研究開発機構(JAEA)には、化学、機械工学、数学、生物学、地球科学、流体力学、原子物理学などの分野から700人近い研究者が集う。彼らは全国9拠点で、原子力科学技術に係る先端基礎研究や放射線利用研究、さらには高い安全性を持つ次世代原子炉や地層処分技術の開発まで様々な研究開発に取り組んでいる。国立の研究機関であるその原子力機構は具体的にどのような研究開発を行い、社会に対してどのような価値を提供しているのか。しようとしているのか。本企画を通じて、原子力機構の活動のみならず、様々な原子力科学技術の側面に触れていきたい。
国民の財産
人々の普段の生活の中であまり意識することはないが、思わぬところで原子力を使った科学技術が利用されている。「原子力」といえば、より安全な高温ガス炉(HTTR)など新型の原子炉開発や原子力発電所で使用された核燃料の地層処分研究などが真っ先にイメージされるが、日常で使用されている高性能燃料電池、自動車エンジンやタイヤの開発、化石の年代測定、滅菌・殺菌技術、水素製造技術なども原子力科学技術の一例である。原子力機構は、これらの原子力研究開発で年間約900件の査読付論文を発表するほか、約300件の特許技術を保有している。原子力機構の専門知識や技術・研究施設は、日本国民の財産であり広く活用することで日本社会の更なる発展に寄与することをめざしている。
イノベ起爆剤
原子力という言葉だけで敬遠され、自分たちとは関係ないと思われがちだ。けれども私たちは、原子力機構の価値を知ってもらい、原子力をもっと身近に感じてもらいたいと思っている。このため2021年10月にJAEAイノベーションハブを創設し、ほかにはない大規模な研究施設を使った原子力×異分野の知の融合によるイノベーションの創出に取り組んでいる。多種多様な分野の科学技術が融合する「原子力」だからこそ、これまでにないイノベーションを起こす起爆剤になれると信じている。
今回の連載企画では、これまであまり知られてこなかった原子力科学技術から意外と身近な研究成果、さらには原子力機構にしかできない研究開発など、原子力機構の価値を紹介していく。