独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.285

＝　現場から　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

核セキュリティに係る国際トレーニングコースの開催

核不拡散・核セキュリティ総合支援センターは、2013年7月22日～8月2日にアジアを中心とした各国の核セキュリティ担当者を対象として、「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する地域トレーニングコース（RTC）」を開催しました。本コースの開催は今回で3度目になりますが、今回は規制機関、関係政府機関、治安当局、研究機関、事業者等、14カ国から29名の参加がありました。
　本コースは、「物理的防護」の基礎について包括的に学ぶものであり、原子力施設において何を、どのような脅威から、どのように防護するのか、原子力施設の物理的防護システムをどのように設計するのか、またそのシステムをどう評価するのかについて、2週間かけて学びます。参加者は、講師による講義の後、小グループに分かれて演習を行い、演習・議論を通じて理解を深めていきます。
　本コースはもともと、米サンディア国立研究所（SNL）が開発したコースを基にしており、当センターの設立以来、SNLと協議を重ねて、本コースの開発・実施・改善を繰り返してきました。また、当センターが整備した核物質防護実習フィールドとバーチャルリアリティ（VR）システムを組み込んだり、東京電力（株）福島第一原子力発電所の事故の教訓や、日本における核セキュリティ文化の取組みを紹介する特別講義を加えたり、SNLのオリジナルとは違った、日本独自のトレーニングに変わってきています。
　参加者は、物理的防護システムを構成する機器類（センサー、カメラ等）の特性や機能について学習しますが、教室での座学よりも、核物質防護実習フィールドでの実機を使った説明や、四つのグループに分かれての演習を重視し、体験型の内容にしています。同様に、VRシステムを活用し、肉眼では見えないセンサーの検知範囲の可視化も行い、講義に組み込みました。参加者からは、「講義を聞くだけよりも理解が深まる」「実際の機器を見ることができて非常にわかりやすかった」等、高い評価を受けました。また、コースの最後には、仮想の原子力施設の物理的防護システムの改善について、四つのグループがそれぞれ発表を行いました。
　コース期間中の被爆地訪問も、本コースの大きな特徴です。今回は広島市を訪問し、平和記念資料館の見学、被爆者講話の聴講、放射線影響研究所訪問を行いました。参加者からは、「原子力に携わる者として、自らの責任と役割の重要性を再認識した」「日本が自らの体験を私たちと共有してくれることに感謝する」「一生忘れられない訪問になった」等の感想が寄せられました。
　本コースの実施により、当センターの講師陣も参加者の出身国における核セキュリティ対策の実態や課題、ベストプラクティス等を学ぶことができ、お互いに充実した2週間となりました。
　今後も、アジア諸国や日本国内における核不拡散・核セキュリティの強化にさらに貢献できるよう、様々なトレーニングコースを提供していきます。

（核不拡散・核セキュリティ総合支援センター　計画管理室）