独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.279

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核物質管理科学技術推進部の業務紹介

今回は核物質管理科学技術推進部の業務について紹介します。
　核物質管理科学技術推進部は、原子力機構における核物質等の管理を適切に実施するとともに、核物質が核兵器に転用されることを防ぐための核不拡散政策の研究や核不拡散技術の開発、包括的核実験禁止条約(CTBT)の国際検証制度に係わる取組みや非核化支援等、種々の活動を行っています。このうち、今回はCTBTに関連する活動について紹介します。
　 1996年に、地球上のあらゆる場所での核実験の実施を禁止し、加盟国がそれを順守していることを検証する体制の確立等を規定したCTBTが国連で採択されました。一部の条約発効要件国が批准しておらず、条約自体は未発効ですが、条約発効に備えて、核実験を探知するための275箇所(2013年5月現在)の認証済み監視観測施設(地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動の4種類)から構成される国際監視制度が、既に世界中に整備されています。
　原子力機構は、日本国内に設置される監視施設のうち、放射性核種の監視を行う2つの観測所（沖縄県恩納村、群馬県高崎市）と世界各国の観測所から送付される試料の詳細分析を行う実験施設（茨城県東海村）の整備を完了し、核実験監視のための技術要件を満足する施設としての認証を得て運用を行っています。それとともに、世界中の観測所網から得られるデータを、原子力科学研究所(茨城県東海村)内に設置された国内データセンター(NDC)で受信し、日常的にデータ解析を実施しています。以下に、CTBTに係わる最近の活動から3点紹介します。
　 (1) 2012年4月から10月まで、青森研究開発センターむつ事務所大湊施設（青森県むつ市）に米国の開発した移動型希ガス観測装置を設置し、米国パシフィックノースウェスト国立研究所、包括的核実験禁止条約機関準備委員会（CTBTO）及び公益財団法人日本分析センターと、大気中における希ガスの共同観測を実施しました。この観測は、東アジア地域における放射性希ガスのバックグラウンド挙動（平常時の濃度変動の範囲等）を把握することにより、核実験、特に地下核実験をより正確に検知する手段を得ることを目的としたものです。
　 (2) 2012年11月に、希ガス解析の各国専門家を対象に希ガスに関する観測・データ処理・分析技術の進捗や課題等について発表及び意見交換することを目的として、CTBTOと共催で、国際希ガス実験（INGE）ワークショップを茨城県水戸市で開催しました。
　 (3) 高崎観測所（群馬県高崎市　高崎量子応用研究所内）で2013年4月8日から9日にかけて捕集した大気試料から、通常の放射能濃度を超える放射性希ガス（キセノン-131m、キセノン-133）が同時に検出されました。このような検出はこれまでほとんどなく、CTBTOは、これは北朝鮮が2013年2月12日に行ったと宣言した核実験に由来する可能性があることを、同年4月23日にプレス発表しました。この発表は、CTBTOが試料の詳細分析を行うとともに、放射性キセノンの同位体比から核分裂の発生日を推定した結果や、大気拡散モデルを使用した放出源の推定解析結果等を総合的に検討し、今回の事象が、2月の核実験に由来すると仮定しても矛盾がないと判断したものです。
　このように核物質管理科学技術推進部では、信頼性の高いCTBTの国際検証体制の確立に貢献する活動を行っています。
　上記の詳細については、以下のURL記載の情報をご参照ください。
・高崎観測所における通常の濃度変動範囲を超える放射性キセノンの検出について
　 http://www.jaea.go.jp/04/np/nnp_news/attached/0195a1-1.pdf
・包括的核実験禁止条約（CTBT）の検証に係る放射性希ガスの共同観測を開始
　 http://www.jaea.go.jp/02/press2012/p12050801/

（核物質管理科学技術推進部）