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ここフランスでは、6月終わりから8月にかけての長いバカンスシーズンが終わり、9月からは仕事モードに切り替わります。今年は気温が低めで、9月初旬というのにコートを着ている人も見掛けます。10月からは恒例のストライキシーズンに入りますので、フランスにお出かけの際はご注意ください。パリではスリや置引きにも注意する必要があります。
フランスは日本と同様に石油資源が乏しく、ガソリン代はリッター当り250円を超えています。食糧やエネルギー料金の値上がりで、物価上昇が続いているのも同様です。地球温暖化防止のため、省エネとともに、原子力、水力、風力、太陽光などのエネルギー源のベストミックスで、CO2の排出削減にも積極的に取り組んでいます。
フランスは電力の約8割を原子力で賄っており、その技術力を背景に北アフリカ、中東、中国、北米などへ原子力ビジネスを展開しています。日本との技術協力も盛んで、既存炉だけでなく、次世代炉や核融合の分野でも密接な協力関係を築いています。
今年は日本とフランスの交流が始まってから150年目にあたる節目の年で、双方でいろいろな文化交流イベントが開催されました。親日派のシラク前大統領から仕事一辺倒のサルコジ大統領となって、文化交流レベルから一歩踏み込んだ、ビジネス優先の対等な関係での両国の連携が求められているように思います。微力ではありますが、原子力の平和利用を通じて、日本とフランスのより一層の交流を深め、地球温暖化やエネルギーなどの地球的規模の問題の解決に取り組んでいきたいと思います。
国際部パリ事務所長 佐藤和二郎
今回の「研究開発現場から」は、安全研究センターです。
安全研究センター廃棄物・廃止措置安全評価研究グループでは、放射性廃棄物の処分の安全性や原子力施設の解体の安全性についての研究を行っています。今回は、自分が従事している処分安全性の研究について紹介します。
放射性廃棄物を処分する際は、適切な人工バリアを適切な地質環境に設けて生活環境から隔離し、将来公衆が被るかもしれない被ばくを低減しなければなりません。
しかしながら、極めて寿命の長い放射性廃棄物の処分安全性を判断するためには、数千年あるいは数万年といった超長期まで対象とした安全評価が必要です。
超長期の事象には不確かさが伴いますので、十分に保守的と判断される評価を行っても算出される被ばく量が許容されるレベル以下となることが重要です。つまり安全評価とは、将来の被ばく量を言い当てようとするものではなく、評価する際の様々な設定が保守的であることを技術的に判断できるかどうかがポイントです。
例えば、ある人工バリアがどのくらいの速度で劣化するか?を実験的に得ようとしても、せいぜい数年程度のデータしか得られません。その結果を技術的説得力をもって超長期の時間スケールに適用するには科学的根拠が求められます。すなわち、その劣化がどのようなメカニズムで生じ、その速度はどのような反応で支配されているか?を明らかにすることが必要です。
こうしたメカニズムを解明するためには、@既往の知見を整理して、Aメカニズムの仮説(一つではないかもしれません)を立て、B仮説の傍証となるあるいは棄却するための検証実験方法を考え、C実験結果もふまえて仮説の検証をする、といった作業の繰り返しが必要です。このうち、AとBは実に面白く、一人で悶々と考えるよりも誰かと話して解決することもありますし、居酒屋での雑談中など、ひょんなキッカケで妙案が浮かぶこともあります。
よって、当グループでは議論を重視し、いくつかの定例ミーティングの場を設けています。中にはお茶菓子をつまみながら議論する場もあります。傍目には単なる雑談のようにも見えますが、実は重要なヒントが見つかる場だったりします。
安全研究センター
廃棄物・廃止措置安全評価研究グループ
前田 敏克
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