平成20年9月5日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

ニオブチタン超伝導導体で大電流化への課題を解決
−52kAの通電試験に成功しITERポロイダル磁場コイルに重要な技術を実証−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」という。)の核融合研究開発部門の研究グループは、ITER1)計画推進の一環として、ITER機構2)及び欧州原子力共同体3)(以下「欧州」という。)と協力して、ITERポロイダル磁場コイル(資料1)として採用予定のニオブチタン超伝導導体4)を用いたコイルを、那珂核融合研究所(茨城県那珂市)の超伝導コイル試験装置(資料2)において試験してきましたが、この度、磁場6.4T(テスラ)、温度4.5K(ケルビン)の条件下で52kA(キロアンペア)の大電流通電に成功しました。

ITERポロイダル磁場コイルでは、導体の電流値を従来実績(約30kA)の約1.7倍にする必要がありましたが、今回の結果はその要求性能を満足するものであり、コイルの製作に必要な技術がこれで確立されました。

原子力機構は大型超伝導コイルの試験では世界最高級の技術と豊富な実績、高性能な試験装置を有することから、本コイルの試験を実施しました(資料2)。試験は原子力機構、欧州及びITER機構の専門家で構成されたチームにより実施され、米国の研究者とポロイダル磁場コイルの調達を担当するロシアの研究者も参加しました。

今回試験したコイル(外径:約1.6m、重量:約6トン)の製作では、ロシア(ITER工学設計活動5)当時のロシア国内チーム)が製作したニオブチタン超伝導線を、大電流を得るために1,440本束ねて撚り線とし、欧州が撚り線にジャケットと呼ばれるステンレス管を被せて導体に仕上げコイル形状に加工しました(資料3)。

本コイルに大電流を安定して通電させるためには、1,440本の超伝導線どうしの接触抵抗6)を小さくして各超伝導線に均一の電流を流すことが重要ですが、その一方で、変動磁場7)による導体での発熱(交流損失)を低減するため、接触抵抗を大きくする必要がありました(資料4)。この相反する技術要求を実現することが重要な課題でしたが、超伝導線の表面に被覆を施して接触抵抗を適切なものにすることができるという原子力機構の知見に基づき、今回のニオブチタン導体では、厚さ2μm(マイクロメートル)のニッケルメッキ8)を超伝導線の表面に施す手法を採用することでこの問題を解決しました。

今回の成果に基づき、ITER計画において欧州、ロシア及び中国がポロイダル磁場コイル用導体の調達を開始することとなります(資料1)。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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