4_7_8 瑞浪超深地層研究所計画における再冠水試験の概要
ポイント
概要

大規模地下施設を閉鎖する時の坑道周辺の地質環境特性の回復過程を理解し,坑道閉鎖後の地質環境特性の変遷を推定する調査・解析手法を構築することを目的として,再冠水試験を実施しています。

再冠水試験では,瑞浪超深地層研究所における深度500m研究アクセス北坑道の先端にある約46mの冠水坑道(図1参照)において,止水壁を設置して地下水による坑道冠水と排水を繰り返し行い,坑道周辺における地質環境の力学・水理・化学的変化を観測します。さらに,得られた観測データに基づき,坑道閉鎖後の水圧回復プロセス,坑道周辺の応力状態,化学状態についての様々な解析を実施します。

再冠水試験は大きく分けて,以下の順で実施します(図2参照)。
①冠水坑道掘削前の水圧・水質分布の確認,②冠水坑道の掘削,③冠水坑道でのモニタリング装置設置,④ボーリングピットの埋め戻し,⑤止水壁の施工,⑥冠水(繰り返し),⑦埋め戻し材の回収・評価

これまでに④までを実施し,冠水坑道周辺における地質環境特性調査や地下水水圧モニタリングの結果,モニタリング孔の観測区間ごとに水圧値が大きく異なることなどから,周辺岩盤の水理学的な不均質性が高いことを確認しました。

内容

高レベル放射性廃棄物の地層処分事業においては,地下300m以上の深さに数km²四方に及ぶ大規模な最終処分施設が建設される予定です。このような大規模地下施設の建設および操業は長期間にわたり,周辺の地質環境特性が変化する可能性があることから,地下施設の閉鎖(埋め戻し)後の地下水の水圧や水質といった地質環境特性を推測するための調査・解析技術が必要となります。

そこで,瑞浪超深地層研究所の深度500m研究アクセス北坑道の一部に地下水による冠水が可能な坑道(冠水坑道)を設け,坑道閉鎖(埋め戻し)を想定した再冠水試験を計画しました。冠水坑道の大きさは,幅5m,高さ4.5m,長さ約46mであり,耐圧性の止水壁により地下水を坑道内に貯留可能なレイアウトとしています(図3参照)。再冠水試験では,冠水,周辺の水圧回復,冠水坑道内の地下水の排水(減圧),再冠水を繰り返し行います。冠水坑道周辺においては,再冠水試験に伴う坑道周辺の地下水の水圧・水質の変化や岩盤挙動を把握するための観測孔を配置しています(図3参照)。また,冠水坑道内から下向きに実施したボーリング調査のために設けたボーリングピットにおいては,将来,研究坑道の埋め戻しに使用される可能性のある埋め戻し材の冠水時の物性変化や,それが周辺の地質環境特性に与える影響を把握するために必要な観測機器の耐久性や設置の考え方の確認を目的として,ピット埋め戻し試験を実施します。

2014年度までに,冠水坑道の掘削,周辺の観測装置の整備が進められ,冠水前の初期状態の観測を開始しています。冠水坑道掘削中の地下水の水圧変化を観測した結果,割れ目の連続性や透水性割れ目の分布の影響と考えられる地下水の水圧低下量の違いが確認されました(図4参照)。

2015年4月現在,止水壁の設置作業を行っており,6月以降に止水壁の止水性能を確認した後,冠水時の様々な観測を開始する予定です。今後は,再冠水試験に伴い観測される地質環境特性の変化と事前の予測結果との比較を行い,解析手法の妥当性の確認,改良を実施していきます。さらに,実際の地質環境における止水壁や観測機器の適用性を確認し,大規模地下施設の閉鎖時やその後の長期観測に利用可能な要素技術として整備していく予定です。

瑞浪超深地層研究所の研究坑道レイアウト図
図1 瑞浪超深地層研究所の研究坑道レイアウト
冠水坑道における再冠水試験の流れの画像
図2 冠水坑道における再冠水試験の流れ
冠水坑道周辺の観測孔の配置図
図3 冠水坑道周辺の観測孔の配置
冠水坑道掘削中の12MI33号孔での地下水圧変化図
図4 冠水坑道掘削中の12MI33号孔での地下水圧変化
割れ目が連続していると考えられる観測区間(No.2,No.3,No.6)では地下水圧の低下が確認され,割れ目の連続が乏しいと考えられる観測区間(No.1,No.4,No.5)では地下水圧の低下が認められないか,もしくは非常に小さいことが確認されました。
参考文献
  1. Onoe, H., Iwatsuki, T., Saegusa, H., Ohnuki, K., Takeuchi, R., Sanada, H., Ishibashi, M. and Sato, T. (2014): Groundwater Recovery Experiment using an Underground Gallery in Fractured Crystalline Rock, 8th Asian Rock Mechanics Symposium.

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