日本原子力研究開発機構

安全研究・防災支援部門
原子力緊急時支援・研修センター

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福島県への派遣

緊急時モニタリング及び身体サーベイ等(放射線支援班及び医療支援班)

文部科学省(以下、「文科省」と呼びます。)からの専門家の現地派遣要請を受け、第1陣7名が発災当日の夜(3月12日(土)1:54)に支援・研修センターを出発し、福島オフサイトセンター(大熊町)に向かいました。第1陣は、防衛省のヘリを利用した移動でしたが、第2陣以降は、原子力機構所有のバス等による移動となりました。第1陣及び第2陣は、福島オフサイトセンター(大熊町)に隣接する福島県原子力センターを拠点とし、文科省や福島県等の関係機関と協力し、周辺の空間線量率等の測定を実施しました。

3月14日(月)夜、現地対応拠点を福島県庁(福島市)に変更するとの決定がなされ、第1陣及び第2陣は帰還し、第3陣以降は、福島オフサイトセンター(福島市)への派遣となりました。第5陣以降は、1陣5日間の活動かつ2日に1回の出発とのサイクルで継続して対応していました。

また、5月末まで、奇数陣、偶数陣で役割を分担し、奇数陣は、文科省等とともにモニタリングを実施し(以下、「放射線支援班」と呼びます。)、偶数陣は、福島県立医大にて緊急被ばく医療活動に備えました(以下、「医療支援班」と呼びます。)。なお、以降は奇数陣、偶数陣ともに放射線支援班として活動していました。

放射線支援班は、福島第一原子力発電所の半径20km以遠の地域を対象にモニタリング車等による環境放射線測定、土壌中放射性物質濃度測定、空気中放射性物質濃度測定等を毎日実施するとともに、臨時の依頼に応じて、福島県の実施する学校等の測定や住民の一時立入に備えた事前の測定等も実施しました。なお、測定や分析の結果については他機関の結果も併せ文科省にてとりまとめ、文科省のホームページに公開されています。

一方、医療支援班は、福島県の緊急被ばく医療支援のため、福島県立医大に身体洗浄車及び体表面測定車を配置し、大量汚染者発生時における二次被ばく医療機関活動を円滑に進めるための対応体制構築を図りました。

支援・研修センター(茨城)前で、出発前の状況
福島派遣者の出発

福島県原子力センターにてモニタリング計画を検討している
モニタリング計画の検討(福島県原子力センター)

福島県でモニタリングをしている状況
現地モニタリングの状況

福島県立医科大学にて身体洗浄車を配置
特殊車両(身体洗浄車)の配備状況(福島県立医科大学)

住民問合わせ窓口対応(福島県の問合せ窓口対応)

福島県自治会館に設置された福島県の問合せ窓口について、経済産業省(以下、「経産省」と呼びます。)からの依頼を受け、開設当初(3月18日(金))から、専門家2名を派遣し、報道状況を注視しつつ専門的な事項を中心に回答し、県職員等と協力して住民からの問合せに対する対応を実施しました。

当初は、日勤及び夜勤の2交代による24時間対応であったことから、3月26日(土)から4月29日(金)の間はさらに2名増員し、4名で対応しました。なお、以降は、8:00から21:00までの対応となりました。〔この対応は、平成23年8月8日をもって終了し、以降は福島市内に新たに設置されたワンストップ相談窓口に引継がれました。〕

福島県の「放射線に関する相談窓口」における支援の写真
福島県の「放射線に関する相談窓口」における支援

内部被ばく検査対応

支援・研修センターでは、自身が所有する2台及び核燃料サイクル工学研究所の所有する1台、計3台の全身カウンタ車(以下、「WBC車」と呼びます。)により内部被ばく検査に対応しています。

3月13日(日)に、文科省からWBC車等の特殊車両の派遣依頼を受け、福井支所(敦賀市)の1台をひたちなか市に移送するとともに、車両の派遣先決定を受け3月15日(火)に支援・研修センター(ひたちなか市)の1台を福島県立医大(福島市)に派遣し、医療支援班の活動に備えました。

3月20日(日)に東京電力より、福島第一の作業員の被ばく線量評価のため、体内放射能測定について依頼がありました。WBC車により対応することとし、3月21日(月)に福島県立医大に配備した1台を東京電力小名浜コールセンターに移動するとともに、原子力機構の専門家数名を派遣して内部被ばく検査を開始しました。測定結果について原子力機構の専門家による評価を行った後、東京電力に報告されました。4月25日(月)まで測定及び線量評価を実施しており、その間の測定対象者は、約330人でした。以降は、東京電力の担当者に測定方法等の指導を行った上で、WBC車を貸与し測定を引き継いでいますが、5月12日(木)測定分までは、引き続き原子力機構の専門家により線量評価を行いました。5月9日(月)からは追加で1台貸与し、東京電力の各支店等で測定にあたりました。また、5月30日(月)から、さらに追加で1台東京電力小名浜コールセンターに配備しました。なお、車検や点検の際は、原子力機構に帰還しています。

特殊車両(WBC車2台)の配備状況(いわき市)の写真
特殊車両(WBC車2台)の配備状況(いわき市)

福島オフサイトセンター(福島市)総括班及び警戒区域内への一時立入支援

5月6日(金)より、福島オフサイトセンター総括班に専門家1名の派遣を開始し、原子力災害現地対策本部長等への助言、公益一時立入や住民の一時立入の支援を行いました。当初は、公益一時立入に備えた放射線測定資機材の取扱い指導や住民の一時立入の際の防護衣等の装備の検討が中心でした。その後、警戒区域内への住民の一時立入の本格化に併せ、5月下旬から3〜4名の専門家を派遣し、うち1名が技術的な助言を中心に実施し、他2〜3名が警戒区域出入の拠点である中継基地の運営やその準備等の一時立入の支援を実施しました。

また、併せて、一時立入の際の安全管理者(警戒区域内で住民が乗車する車両内で安全管理を担当)等を、実施時の規模にあわせ10から30名程度派遣して欲しいとの依頼が、原子力災害現地対策本部からあり、原子力機構の職員のほか、原子力機構のOBや、後には(社)技術士会会員にも協力を仰ぎ、支援活動を実施しました。

福島オフサイトセンター(福島市)における支援の写真
福島オフサイトセンター(福島市)における支援

一時立入における支援(中継基地の状況)の写真
一時立入における支援(中継基地の状況)

放射線測定講習会

4月21日(木)福島県より、福島県ハイテクプラザ(郡山市)にて、工業製品への放射性物質非汚染証明への対応を拡充するため、一般企業職員等を対象に実施する放射性測定講習会への講師依頼がありました。原子力機構OBにも協力を仰ぎ、講習1回につき講師1名+補助数名にて、サーベイメータの取り扱い等について講義及び測定実習を、4月28日(木)、5月12日(木)、19日(木)、25日(水)、26日(木)、6月2日(木)に実施しました。

放射線測定講習会(郡山市)の写真
放射線測定講習会(郡山市)

学校モニタリング

文科省の依頼を受け、原子力機構OBにも協力を仰ぎ、福島県内の学校等における校庭等の空間線量率の測定を実施しました。対象は、福島県内の小中学校等56学校の校庭、教室での放射線量率で、4月14日(木)から週1回実施しました。また、放射線量率の高い特定の学校については、遊具、花壇、通学路での放射線量率測定、土壌中放射性物質濃度深度分布測定、大気中ダストの放射性物質濃度測定等の詳細調査を実施しました。

6月下旬からは、対象を拡大し、専門学校等(6月23日(木))や国立青少年自然の家ハイキングコース等(6月30日(木))の放射線量率測定を実施しました。

学校モニタリングの様子の写真
学校モニタリングの様子


茨城県への派遣

3月中旬から下旬にかけ、茨城県からの要請により、以下の支援を実施しました。


技術的・専門的な支援、助言等

緊急時環境線量予測システム(世界版)WSPEEDI第2版(WSPEEDI-Ⅱ)を用いた拡散予測計算

原子力基礎工学研究部門では、緊急時環境線量予測システム(世界版)WSPEEDIを開発しており、平成21年2月5日に第2版(以下、「WSPEEDI-Ⅱ」と呼びます。)を開発したと発表しました。WSPEEDI-Ⅱの主な機能は、放射性物質等の放出を仮定し、その後の気象条件を予測することで、大気中への放射性物質の拡散を予測する機能(放射性物質拡散予測機能)やモニタリング等で得られたデータをもとに発生源や放出量を推定する機能(放出源推定機能)です。

3月15日(火)にWSPEEDI-Ⅱによる放射性物質の大気拡散予測依頼が、文科省よりありましたが、原子力基礎工学部門の研究用システムが停電により使用できる状況ではありませんでした。そのため、原子力基礎工学部門の協力のもと、昨年度より実運用に向け試験的にWSPEEDI-Ⅱシステムを設置するとともにマニュアル等の整備をすすめていた支援・研修センターにて計算を実施することとし、同日12:34に第1報を報告しました。同日15:10には、文科省より放出源推定計算依頼があり、こちらについても計算結果を報告しました。

翌日、3月16日(水)には、WSPEEDI-Ⅱの拡散予測結果については、原子力安全委員会にも送付することとなり、ルーチンの計算結果を午前(3月17日(木)〜4月8日(金))、午後(3月19日(土)〜3月25日(金))に毎日送付しました。この計算は、当該報告日から数日間、一定の割合で放射性物質が放出され続けた場合の拡散予測を計算したものです。また、4月9日(土)以降も、5月12日(木)まで計算の実施は継続していました。

なお、数日後には、原子力基礎工学部門の研究用システムも復旧しており、放出時期や放出量をより具体的に推定した拡散予測は原子力基礎工学部門にて実施し、文科省等にて公表されています。

また、3月20日(日)に、モニタリング計画策定の資料として茨城県からの依頼に応じて、ヨウ素の地上濃度分布についても計算し、結果を送付しています。

WSPEEDI-Ⅱの計算結果
WSPEEDI-Ⅱの計算

健康相談ホットライン開設

3月13日(日)に文科省より問合せ対応のフリーダイアル(以下、「健康相談ホットライン」と呼びます。)開設の依頼があり、回線の設定や対応者の手配等の準備を行いました。文科省と調整の上、3月17日(木)13:10に文科省より健康相談ホットライン開設のプレスリリースがなされ、13:18に問合せの第1報を受信し、以降、対応を継続しました。〔最終的に、平成24年9月18日にて終了しました。〕

開始当初は、10:00〜21:00まで、原子力機構は8回線で対応し、3月25日(金)から大学や関係機関等も対応に加わりました。6月11日(土)からは、原子力機構のみの対応に戻り9:00〜18:00の対応となりました。

原子力機構では、1日あたり約10〜20名が対応にあたっており、当初は、1日300件程度、平成23年10月で1日100件程度対応しました。終了までの対応件数は、34,581件です。問合せ内容については、毎日全件とりまとめており、問合せ内容やその回答についても文科省と情報を共有しました。

詳細については、健康相談ホットラインをご覧下さい。

健康相談ホットラインの活動状況の写真
健康相談ホットラインの活動状況

土壌(福島第一構内)、海洋試料の分析

3月21日(月)経産省より文科省経由で、福島第一構内の土壌試料中のプルトニウムやγ線核種分析の迅速測定依頼があり、原子力機構内の各拠点に対応を依頼して実施しました。

3月22日(火)の文科省の依頼を受け、(独)海洋研究開発機構が採取した福島県沖海域の海水試料及び海域のダスト試料の放射性物質濃度測定を原子力機構内の各拠点に依頼して実施しました。

国、福島県、茨城県等への助言や情報提供

国に対しては、原子力安全委員会等に原子力機構の専門家を派遣し、拡散評価解析や放射線管理の分野で技術的検討に協力しました。原子力機構内の各部門においては、科学的知見を集約し、派遣した専門家に判断材料を提供しました。また、文部科学省非常災害対応センター(以下、「EOC」と呼びます。)における環境放射線・放射能データのとりまとめ等に関し、専門家を派遣し、24時間対応体制での協力活動を実施するとともに、文科省の国際対応活動に対する協力活動も実施しました。

初期は一般の方々からの問合せもありましたが、健康相談ホットライン等の電話窓口が整備されたこともあり、以降は、国や地方公共団体からの技術的な問合せ、専門家の派遣依頼、分析・測定の依頼、測定方法の指導、一般向けの講習会の依頼が主となりました。


資機材・設備等の活用

特殊車両の活用

支援・研修センター茨城(ひたちなか市)及び福井支所(敦賀市)は、モニタリング車2台、全身カウンタ車(WBC車)2台、体表面測定車2台、身体洗浄車1台、現場指揮車2台、資機材運搬車1台を有しています。福島県への派遣と並行して、福井支所の車両をひたちなか市に移送しました。特殊車両の活動状況については、下記の表をご参照ください。

特殊車両の活動状況の写真

モニタリング車については、放射線支援班にて使用し、主に福島第一原子力発電所の20km以遠のモニタリング活動に使用されました。

WBC車については、福島第一原子力発電所構内の固定式のWBCが使用できなくなっていた東京電力に貸与し、作業員等の被ばく管理に活用しました。

体表面測定車及び身体洗浄車については、福島県立医科大学に配置し、必要になった場合には医療支援班にて活用することとしていましたが、支援・研修センターから数時間で到着できること、緊急に使用する可能性は低いと判断したことから、6月以降は、支援・研修センターにて待機とし、必要な場合に出動することとしています。現場指揮車については、福島市に待機していました。

特殊車両(WBC車2台)の配備状況(いわき市)の写真
特殊車両(WBC車2台)の配備状況(いわき市)

特殊車両(身体洗浄車)の配備状況(福島県立医科大学)の写真
特殊車両(身体洗浄車)の配備状況(福島県立医科大学)

資機材運搬車については、原子力機構の福島技術本部(当時は、原子力機構対策本部)に貸与し、ロボット等の遠隔操作による各種作業を支援するためのロボット操作車として活用されています。

資機材の提供

サーベイメータや個人被ばく測定器については、原子力機構の職員自身が活用することで福島支援に充てることが中心ですが、一部については、国、地方公共団体や東京電力に提供し、放射線測定の強化に貢献しました。主な貸与先は以下のとおりです。

設備の活用(支援棟のインフラ、活用状況)

支援・研修センターの緊急時の拠点となる情報集約室は、支援棟の2階に位置しており、今回の福島支援の拠点となりました。ここでは、地震発生時やその後の対応に活用した支援棟の主な設備について記します。

①免震設備
支援棟の建屋と基礎の間に積層ゴムと鉛ダンパーが設置されており、建屋への被害はありませんでした。

②非常用発電機
数日間商用電源の供給が止まり、また、実施はされなかったものの計画停電も予定されましたが、主要機能は非常用発電機による電力供給で賄えました。

③中水タンク
雑排水用のタンクがあり、トイレ等の洗浄を行えました。

④複数の通信系
電話及びネットワーク(インターネットやTV会議等)について、当センターは各3系統用意されています。1つは、国の原子力防災ネットワーク(統合防災ネットワーク)で、国やオフサイトセンターとのTV会議や緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(以下、「SPEEDI」と呼びます。)及び緊急時対策支援システム(以下、「ERSS」と呼びます。)の配信にも利用されています。他の2系統は、支援・研修センターが防災業務のため使用しているネットワーク(一般系)及び原子力機構の業務に日々使用しているネットワーク(機構系)です。なお、地震発生直後から現在に至るまで、すべての通信系が同時に不通になることはありませんでした(図参照)。また、電話については、災害時優先電話を4回線所持しており、有効に機能しました。なお、別途、中央防災無線網や衛星系の通信設備も用意しています。
ネットワーク図

⑤防災業務情報共有システム
交代勤務により、24時間継続して対応していくためには、情報の記録が重要です。また、時系列の作成等には、防災業務情報共有システム(以下、「情報共有システム」と呼びます。)への記録が大いに役立ちました。

⑥緊急地震速報
ひたちなか市で震度4以上が予想される場合には、支援・研修センター全館に放送されることとなっており、東日本太平洋沖地震の本震や余震の際にも、地震への心構えをする時間がありました。

⑦TV受像機
情報集約室では、在京6局及びBS/CS各1局が同時視聴可能となっており、特に発災直後の情報収集に役立ちました。

物資調達

今回の対応にあたって、問題となったのが地震による流通の停止です。特に対応者の飲料水及び食糧と燃料(軽油及びガソリン)です。

飲料水や食料については、支援・研修センターには、ほとんど備蓄がなく、震災後に商店がほとんど営業していない中で調達することとなり、炊き出し等で対応することとなりました。

支援棟の主要機能は、非常用発電機から供給される電気による部分が大きく、その燃料である軽油の補給を数回行っていますが、その手配に苦労しました。また、特殊車両や通勤用の車両の燃料についても同様に手配が困難でした。

一方、福島への移動については、当初から原子力機構の車両(出退勤バスや公用車等)が利用可能でした。また、特殊車両やバス等の運転手については、契約に緊急時の車両運転を含めるとともに、支援・研修センターにて実施する放射線に係る講習会を受講し、テストにて一定の成績を収めることを要件としていたことが、一助になったと考えています。

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