研究内容紹介

地層処分研究開発について

実際に地下深部で、地層処分システムの設計・施工が可能かどうかを確認する研究です。 工学的技術とともに、研究の成果を、その都度モデルに反映させて、安全性を評価する技術の信頼性を高めます。

処分技術の信頼性向上

高レベル放射性廃棄物を地層処分する際に使われる、人工バリアを定置する際に求められる精度を明らかにする研究開発などを行います。

また、廃棄物を埋設した後の坑道を埋め戻す技術の研究開発も行います。

さらに、構築した人工バリアシステムなどの設計手法の妥当性検討および改良・高度化を進めます。

■人工バリアなどの工学技術の検証
人工バリアの施工品質(定置状態)について、実規模試験を通じた確認が必要となります。この施工品質の基準を定めるため、人工バリアの定置装置に求められる精度(位置や傾き、隙間の大きさなど)を明らかにするとともに、坑道の閉鎖に求められる埋め戻し材の性能を明らかにします。

140、250、350m調査坑道における低アルカリ性セメントを用いた吹付施工と東立坑の深度374~380mにおける低アルカリ性セメントを用いたコンクリートによる覆工を行い、その適用性を確認します。
低アルカリ性のグラウト材料の原位置試験については、深度250m調査坑道から深度350m調査坑道周辺にグラウト材料を注入し、その止水性や地下水への化学的影響を確認します。

東立坑での低アルカリ性コンクリートの覆工

深度350m坑道での低アルカリ性グラウトの
影響確認のための採水装置の設置

覆工コンクリートの施工範囲

■人工バリア性能確認試験の実施
 人工バリア性能確認試験は、地下深くの坑道(深度350m調査坑道)に実際に実物大の人工バリアを設置し、その性能について検証します。
 試験では、模擬のオーバーパックと緩衝材および各種センサーを坑道に設置した上で、坑道を埋め戻します。この際、施工方法や設計についても検証します。
詳細はこちらをご参照ください。

■オーバーパック腐食試験の実施
 オーバーパック腐食試験は、地下深くの坑道(深度350m調査坑道)に実際に模擬オーバーパックを埋設し、オーバーパックの候補材料である炭素鋼の腐食の状況を確認します。
 試験では、コンクリートで覆った試験孔(穴)に、模擬オーバーパックと緩衝材および各種センサーを埋設した上で、地下水を注入しながらオーバーパック(炭素鋼)の腐食の状況を観測します。また、数年後には模擬オーバーパックを取り出して、実際の炭素鋼の腐食の状態を分析します。
詳細はこちらをご参照ください。

■地層処分実規模試験施設を活用した研究
 ゆめ地創館に隣接する、地層処分の概念やその工学的実現性を体感できる地層処分実規模試験施設において、試験施設を活用した緩衝材の定置試験などを他の研究機関との共同研究として実施します。

緩衝材定置試験設備の概念図と把持装置

安全評価手法の高度化

地層処分の安全性を評価するのに必要な地質環境データの項目、量、精度の確認、安全評価で用いるモデルなどの適用性試験や改良を行います。

■安全評価モデルの高度化
地質環境への安全評価手法の適用性を確認することや安全評価手法の信頼性を向上させるため、第1段階での調査研究において取得していない拡散係数や収着分配係数などの物質移動に関するデータのほか、物質移動に影響を及ぼすと考えられる要因である、有機物、コロイドおよび微生物活動などに関する基礎データの蓄積を進めるとともに、物質移動に関わるメカニズムや現象の理解を通じて、データの信頼性と精度の向上、ならびに物質移動に関わるモデルの高度化を図ります。

■原位置トレーサー試験の実施
天然バリア(岩盤)および人工バリア(緩衝材)中での物質の挙動を計測するための物質移行試験を実施します。深度350m調査坑道では、割れ目などがない岩盤部分(健岩部)での拡散現象によるトレーサーの移動を把握する試験と、数メートル規模の単一割れ目面内の水の流れ方(水理特性)や物質の移動の仕方(物質移動特性)を把握する試験を実施します。

健岩部を対象としたトレーサー試験の概念図

単一割れ目を対象としたトレーサー試験の概念図

単一割れ目を対象としたトレーサー試験状況

試験に使用するボーリング孔

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