核燃料サイクル開発機構
副理事長 敦賀本部長

中神 靖雄

新型転換炉原型炉「ふげん」自主技術開発の成果

 「ふげん」は、エネルギー安全保障のために核燃料サイクルを確保するという、我が国の原子力政策の基本課題に取り組み、自ら設計、建設、運転し、発電プラントとしての技術的成立性を実証し、国内の原子力基盤技術の底上げへの寄与と我が国のプルトニウム利用の先駆的役割を果たしてまいりました。
 「ふげん」はナショナルプロジェクトとして政府、学会、産業界が総力をあげて結集して開始されたプロジェクトです。 この結集された力は、各メーカーでの新型転換炉の概念設計の検討、重要機器の開発へと繋がり国産化の成功に結実しました。大洗工学センターでの大型試験施設を用いた多くの試験結果が「ふげん」の設計に反映されました。これらの成果は、国内の原子力開発の技術向上に貢献したと考えています。
 運転においても自らの手で課題を解決することが基本的な考えで、プラント運転管理技術の向上に向けて、多様な技術開発に挑戦してきました。原子炉冷却系を構成するステンレス鋼材の応力腐食割れ発生防止策としての水素注入技術、被ばく低減技術としての系統化学除染技術や亜鉛注入技術、そして重水炉特有の重水リサイクル技術や給水流量制御系にファジィ制御を適用するなどがその例としてあげられます。
 こうした運転・保守技術の積み重ねが、1986年のチェルノブィリ事故におけるプラント挙動の解析評価や事故原因の究明に寄与することになります。その後は国際原子力機関(IAEA)を中心としたチェルノブィリ型炉(RBMK炉)の安全性向上への技術協力や安全性の国際標準化への支援、ロシア・リトアニア両国との2カ国間協力などで評価される成果を上げることになりました。また、原子力研究交流制度による近隣アジア諸国から多数の研究者を受け入れ、研究者の母国の原子力技術の発展にも貢献しています。
 これらの成果を残すことができましたのも、昭和53年の初臨界から25年に及ぶ期間の中で少なからぬトラブルを克服しつつも商業炉に比肩しうる運転実績を残すことができたことによるものであります。「ふげん」の運転に関してご支援・ご指導いただきました国、地元自治体、地元の方々に深く感謝申し上げる次第です。
 「ふげん」は運転を終了いたしましたが、技術開発はまだ道半ばです。これから折り返し、原子力発電所の廃止措置技術の開発を新しい使命として取り組んで参ります。これからも、関係各位のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。



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