発刊にあたって



核燃料サイクル開発機構
理事長

都甲 泰正

新型転換炉原型炉「ふげん」開発の軌跡

 新型転換炉の開発を終了するにあたり、新型転換炉開発の実績と成果をとりまとめ、ここに「新型転換炉原型炉『ふげん』開発実績と技術成果」を発刊する運びとなりました。発刊にあたり一言ご挨拶を申し上げます。
 新型転換炉の誕生は、約40年前に遡ります。昭和38年6月原子力委員会は、将来性を期待できる型式の動力炉(発電炉)を自らの手で設計から建設まで一貫して行うこととした「国産動力炉の開発の進め方」を決定しました。その後、昭和39年10月同委員会は各界の有識者で構成される「動力炉開発懇談会」を発足させ、核燃料サイクルも含めた総合的な動力炉(発電炉)の開発方針について検討に入りました。
 そして、原子力委員会は、昭和41年5月に動力炉開発の基本方針を決定します。その主な内容は、高速増殖炉と重水減速沸騰軽水冷却炉(新型転換炉)を並行して開発すること、開発のために特殊法人を設立すること、国際協力を活用することなどでした。この決定を受け、政府、学会、産業界が総力をあげて結集し、ナショナルプロジェクトをスタートさせました。
 「ふげん」は、昭和53年3月20日に初臨界を迎え、我が国の自主開発による初めての国産発電プラントとして稼動を始めました。以来、平成15年3月29日に運転を終了するまでの25年間、平均設備利用率62%、総発電電力量219億kWhを達成して商業用発電炉にも比肩しうる良好な運転実績を残し、新型転換炉が発電プラントとして成立することを実証しました。
 また、「ふげん」は初臨界時からウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)集合体を使用し、昭和62年には、自らの使用済MOX燃料集合体から取り出されたプルトニウムを再度MOX燃料として炉心に装荷し、「核燃料サイクルの輪」を完結するなど我が国における核燃料サイクルを先駆的に実証しました。このような成果は、プルトニウム燃料開発・製造技術、燃料再処理技術などの核燃料サイクルの基盤技術を我が国に定着させる原動力となりました。
 また、「ふげん」の運転期間を通じてのMOX燃料集合体使用体数は772体に達し、平成14年度末現在では、世界の熱中性子炉で使用されたMOX燃料集合体数の約2割を単一の原子炉で使用したことになり、世界一の使用実績となります。
 「ふげん」は、原型炉として実証炉に繋げることができないまま運転を終了したことは誠に残念ですが、「ふげん」プロジェクトに携わった先人の新型炉開発への夢と気概、実践で積み重ねた技術の重みは、今後新たなプロジェクトを始める技術者やそれを支える各界の方々へと引き継がれていくものと確信しています。
 新型転換炉の開発を終了するにあたり、「ふげん」の建設、運転に暖かいご支援、ご協力をいただきました地元の皆様や各界関係者の方々に深く感謝申し上げるとともに、今後の「ふげん」での廃止措置のための技術開発、「もんじゅ」を中核とした核燃料サイクル技術の開発について、ご理解、ご協力をお願い申し上げ、発刊のご挨拶といたします。




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