第11章 大型炉の設計と研究開発

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した。本構想は、従来のATR と原子炉システムが異なることから、少し詳しく述べる。
)ATRの炉心基本構造(重水が入ったカランドリアタンクに燃料を収納した圧力管を配置する炉心構造)を変えずに、そのカランドリアタンクを軽水が入った圧力容器内に収容し、炉心と再循環系を一体化させた二重圧力容器構造とする。
)圧力管本数を削減し、外側圧力容器の大きさをA-BWRの圧力容器並みとするため、圧力管の長さ(炉心有効長)を「ふげん」の3.7mから約7mとし、チャンネル当たりの熱出力を増大させる。
)燃料は、約3.5m×2 段とし、54 本クラスター燃料とする(2 段繋ぎの燃料構造は、RBMKで採用されている)。燃料交換は、軽水炉と同様に、原子炉停止時に圧力容器上部蓋を開けて交換する。
)圧力管は、「ふげん」において開発実績がある内径117.8mmのZr-2.5%Nb合金管とし、2本を溶接して長さ約8mの管とする。
)外側圧力容器内の軽水は、A-BWRと同様に、圧力容器下部に設けたインターナルポンプで循環する。軽水は、カランドリアタンク下部から各圧力管内に入り、燃料を冷却し、また圧力管出口から出た二相流は、汽水分離器を通り、蒸気をタービンに送
り、分離水を再循環させる。この構造にすることにより、従来のATR にある多数本の入口管・出口管群、蒸気ドラム、再循環系配管等を省く。
)原子炉の出力制御は、圧力容器上部から7本の固体制御棒を挿入することにより行い、反応度補償は、重水中ポイズン濃度調整(または重水水位調整)により行う。また、原子炉の停止は、液体ポイズン管により行う。
)カランドリアタンク内の重水発熱及び圧力管からの伝熱は、重水を給水加熱器に循環させて熱を回収する。また、カランドリアタンク内の重水圧力は、カバーガスのヘリウム圧力を調整することにより、軽水側圧力より若干高めに保つこととしている。
プラント概要
 上記の基本構想の下に、1,000MWe級のATRプラントの概念検討を行い、炉心特性、安全性等の解析、経済性評価を行った。本プラントの概要は、以下のとおりである。
)改良型ATR プラントの全体概念図を図11.4.1に示す。従来のATR に比べ、原子炉廻りは大幅に簡素化、コンパクト化し、これに伴い格納容器と原子炉建屋は小さくなり、外見的にはA-BWR に似ている。しかし、炉心構造は、重水減速沸騰軽水冷


 


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