第11章 大型炉の設計と研究開発

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に行われた。
 これらの動きに対応して、昭和51(1976)年に大洗工学センターのATR 開発4室(DCA、HTL、CTL、安全性試験室)のメンバーで構成する大型炉グループ( HOP : Heavy watereacten Oavai Project Group)が設置された1)
 HOPにおける大型炉の検討は、実証炉設計に資することを目的とし、600MWe級のプラントを想定し、主として原子炉の炉心・燃料、熱水力、安全性の観点からの評価検討を行った。HOPでは、経済性向上を重視したアイディアを取り込み、炉心検討において、太径圧力管(「ふげん」の内径117.8mm φに対し129.8mmφ)を採用し、54本及び60本クラスター燃料について格子ピッチ等をパラメータとした解析を行った。
 燃料は、バーナブルポイズン(ガドリニア)を添加した燃料を採用し、余剰反応度の抑制、局所ピーキングの改善と燃焼度向上を図る検討を行った。また、反応度抑制系としての液体ポイズン制御系、原子炉冷却材再循環系の流量とポンプ動力の低減、新ECCSの検討等を行った。これらの検討結果のうち、太径圧力管等のアイディアは、長期の開発試験を要するため、実証炉設計に採用されなかったが、バーナブルポイズン燃料、液体ポイズン急速注入系等は実証炉設計に反映された。

参考文献
1) 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センター:“動力炉の実用化を目指して大洗工学センター20 年の研究開発”P9、PNC SN9410 90−031(1990)

11.4 1,000MWe 級ATR 実用炉構想の検討(昭和62年〜平成3年度頃)
 ATR実証炉建設計画は、昭和57(1982)年8月に原子力委員会により決定され、電源開発(株)(以下、「電源開発」という)が建設主体となった。電源開発は、建設準備を鋭意進めたが、建設予定地の用地取得が大幅に遅れる状況になった。この間にATR実証炉の建設費は、改良標準化等による建設費のコストダウンがなされた軽水炉に較べて、諸物価のエスカレーションもあり、相対的に割高になってきた。このため、電源開発は、昭和61(1986)年〜平成7(1996)年度に、実証炉の建設コストを下げるための設計合理化作業を行うとともに、実用化段階でのATRの姿を示し、その経済性の見通しを得るため、

実証炉設計をベースに合理化を図った1,000MWe級実用プラントの検討(ATR利用システムの検討)を行った。
 一方、動燃は、昭和62(1987)年〜平成3 (1992)年頃に、ATRの実用化を支援するため、更に物量を削減し、軽水炉に比肩し得る経済性を有することを目指したATR実用炉の構想検討として、次の1,000MWe級ATRプラント構想の検討を行った。
実証炉設計をベースにした1,000MWe級ATR実用炉構想の検討
1,000MWe改良型ATR構想の検討
 これらの実用炉構想の検討内容を以下に示す。
(1)実証炉設計をベースにした1,000MWe級ATR実用炉構想の検討
 ATRの経済性の向上は、建設費に占める割合が大きい原子炉本体設備を小型化・合理化する必要がある。その方策として、多数本クラスタ燃料集合体(実証炉の36 本に対し、48 本、54本または60本)を採用し、チャンネル当たりの出力を増大させるため、有効長を長くして平均チャンネル出力を約1.7倍にすることとし、実証炉合理化設計の燃料チャンネル本数(648 本)と同じ本数で1,000MWe のプラントが可能とした。また、高燃焼度化(50,000MWd/t以上で、15〜18か月運転)を図り、燃料コストを低減することなどを検討した1)
(2)1,000MWe改良型ATR構想の検討
基本的考え方
 ATRは、重水減速沸騰軽水冷却型炉であり、減速材の重水と冷却材の軽水を分離するため、重水が入ったカランドリアタンクに多数本の圧力管を配置した原子炉構造となっている。また、各圧力管内の燃料を冷却する冷却水(軽水)が循環する再循環ポンプ、出口管・入口管群、蒸気ドラム、下部ヘッダーが原子炉周囲に配置され、軽水炉の原子炉及び再循環系設備に比べ複雑で物量が多くなっている。
 改良型ATR の構想検討にあたっては、ATR(重水減速沸騰軽水冷却型炉)の特長(MOX 燃料を有効かつ柔軟に燃焼可能)を損なうことなく、原子炉及び再循環系設備等を徹底的に合理化、簡素化し、経済性向上を図ったプラント構想を検討することとした。また、その方策、システム機器等は、ATR開発、軽水炉等で蓄積した技術をできるだけ活用し、研究開発課題を最小限にするものとした。
基本構想
 改良型ATRは、以下の基本構想を採用して検討


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