第10章 ATR実証炉プロジェクト

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圧力管集合体に用いている異種金属の接合のためのロールドジョイント法について、定温保持試験、熱サイクル試験及び高温強度試験を実施して健全性を確認した。また、圧力管集合体用の供用期間中検査装置について機能、性能を確認した。
・炉心特性確証試験:実証炉燃料集合体を「ふげん」等で照射し、照射後試験を実施して照射挙動を評価するとともに、模擬燃料集合体を用いて長期間の耐久試験を行い、フレッティング腐食等に対する耐久性を確認した。また、重水臨界実験装置での核特性試験、模擬燃料集合体によるバーンアウト限界出力の測定等を実施し、炉心特性を確認した。
・安全性確証試験:圧力管の破断は、工学的には起こるとは考え難いが、これを想定した圧力管破断試験等を実規模試験装置を製作して実施し、破断時の構造物の健全性、燃料の冷却性等安全性を実証的に確認した。また、外周部の燃料棒が、圧力管に接触することを想定した試験を行い、圧力管の安全裕度を確認した。

参考文献
1) 原子力委員会:“新型転換炉実証炉計画の見直しについて”、平成7年8月25日決定


10.4 実証炉計画の中止
 動燃及び電源開発は、上述のごとく相協力して実証炉建設計画を推進し、電源開発は、平成6(1994)年度の時点で、安全審査に向けての設計をほぼまとめ終えるとともに、地元において立地調整を進め、漁業補償は、平成6年に妥結し、用地は、平成6年末の時点で面積にして9 割強を取得するに至った。また、同年11月のATR実証炉建設推進委員会においては、平成7(1995)年12月電調審付議、同10(1998)年4月着工、同16(2004)年3月運転開始の工程が合意され、実証炉建設計画はいよいよ具体化してきた。
 このような状況の中、電源開発は、最新の設計に基づいて実証炉の建設工事費の見直しを行い、電気事業連合会に見直し結果を示した。実証炉の建設工事費は、昭和59 年度時点での見積りで、3,960 億円(昭和59年度価格)であり、国からの補助金約1,077億円(直接工事費の30 %)、電力会社の負担金約1,077億円(同)、電源開発は、約1,805億円を調達する計画となっていた。今回の見直しで、主にエスカレーションが加わることにより、5,800億円(平成5年度価格)となった。発電原価については、当初、初年度で約26円/kWh(国の補助金、電力の負担金
 
を考慮した場合約15円/kWh)であったが、見直しの結果、約38円/kWhに上昇した。
電気事業連合会は、この見直し工事費を検討した結果、平成7 年7月11日、原子力委員会、通商産業省、科学技術庁、電源開発及び動燃に対し、実証炉建設計画の見直しを以下のとおり申し入れた。
・電源開発から提示された実証炉建設工事費、発電原価は高くなりすぎており、これを受電することは極めて困難である。また、現行設計をベースとした実用炉についても、経済性向上の見込みがないと考えられることから、実証炉建設計画の見直しを要請する。
・なお、大間サイトへの対応については、原子力発電所早期着工に対するの地元の期待に応え、電源開発と地元との信頼関係を維持する必要があること、また貴重な新規原子力立地地点であることなどを勘案し、全炉心MOX燃料利用を目指したABWRの建設を電源開発に要請する。
 原子力委員会は、この電気事業連合会の申入れを受け、電気事業連合会、電源開発、動燃、関係地方自治体等の意見を聴取するとともに、実証炉の経済性、核燃料リサイクルを巡る情勢、実証炉計画の代替計画等について検討を行い、平成7(1995)年8月25日、実証炉建設計画の中止、及びその代替計画として全炉心にMOX燃料を装荷することを目指したABWR(フルMOX-ABWR)を建設することが適切である旨の決定を行った1)
 また、同決定においては、その後のATR関連の研究開発について、具体的な実用化を念頭に置いた開発を継続することは適切でないが、将来の核燃料の需給動向の変化に備え、プルトニウム、回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるとのATRの特長を活かしていくための調査・研究を、核燃料リサイクルの進展に資する研究開発の一環として進めていくことが適当であるとした。また、「ふげん」については、安定的かつ継続的なMOX 燃料利用により、国内外の理解と信頼を深めるために重要な役割を果たしてきており、今後は、地元との信頼関係を確保しながら、「ふげん」の特長を活かし、プルトニウム利用技術開発施設、国際的共同研究施設等として利用していくことが適当であるとした。

参考文献
1)原子力委員会:“新型転換炉実証炉計画の見直しについて”、平成7年8月25日決定



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