第11章 大型炉の設計と研究開発

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第11章 大型炉の設計と研究開発

11.1 経 緯
 ATR開発の最終目標は、実用大型炉を完成し、発電体系に組み入れることであたった。昭和44(1969)年、原子力委員会が設置した新型転換炉評価検討専門部会は、原型炉「ふげん」の建設開始にあたって行ったチェック・アンド・レビューの報告書において、今後、実施すべき研究開発項目の一つとして、実用炉評価研究をあげ、実用炉構想を明確にしていくことを謳った。このような状況の下、動力炉・核燃料開発事業団(以下、「動燃」という)は、原型炉「ふげん」の開発と並行して、実用化段階でのATRプラント像を示し、技術的・経済的見通しを評価するため、ATR大型炉(または実用炉)の設計研究を進めた。
 ATR大型炉の設計研究は、表11.1.1に示すように、原型炉「ふげん」の建設・運転及び実証炉建設計画・研究開発と並行して行われ、チェック・アンド・レビューに資された。設計研究の時期により、その出力規模、システム等は異なり、その時期までに開発されたATR 技術をベースに軽水炉等の技術も取り入れて、技術的実現性と経済性を有するATRの大型炉構想を打ち出すため、種々な概念設計を行った。各時期で実施されたATR 大型炉設計研究の内容を以下に示す。

11.2 ATR実用炉概念設計
   (昭和43年〜49年頃)

 ATR原型炉「ふげん」の建設を進めるにあたり、目標である実用化段階におけるATR 実用炉(大型炉)の姿を、原子力委員会等に示す必要があった。このため、ATR実用炉の構想について、原型炉の設計と並行して、昭和43(1968)年〜 49(1974)年頃に、500MWe級実用炉の概念設計、フィージビリティ・スタディを行った1)
 概念設計方針は、原型炉の設計を基にスケールアップし、かつ将来の研究開発等により、達成が見込める技術改良及び合理化を設計に取り込むこととした。また、対象とするプラント出力は、当時の実用原子炉規模と同程度の500MWeを想定した。
(1)炉心概念

 炉型は、原型炉と同じ重水減速沸騰軽水冷却圧力管型炉とし、炉心燃料は、プルトニウムセルフサステイニング(PuSS)、微濃縮ウラン及び天然ウランの3方式について検討し、PuSSまたは微濃縮ウランとした。燃料は、19本、28本及び37本のクラスター燃料について、燃料棒直径、重水対燃料体積比等を変えた最適化サーベイをした結果、28本クラスター燃料を選定した。燃料チャンネル(圧力管)の本数は、600本とした。
(2)設備設計
 本実用炉プラントは、電気出力500MWe、熱出力1,560MWt とし、原子炉、原子炉冷却系設備、燃料取扱設備、工学的安全防護設備、タービン発電機設備等は、原型炉設計をほぼ踏襲した。原型炉との違いは、後備炉停止系を、原型炉で採用された重水ダンプ方式からホウ酸注入方式に変更し、カランドリアタンクの小型化を図ったこと、格納容器を鋼製からプレストレスト・コンクリート製としたことなどである。
 本設計検討は、次節に述べるように昭和48(1973)年度から「新型転換炉評価研究」として実証炉の設計に引き継がれた。

参考文献
1) 動力炉・核燃料開発事業団:“動燃10年史”、 P290−292、(1954)


11.3 ATR大型炉の評価研究
   (昭和51年〜54年頃)

 昭和48(1973)年〜 50(1975)年頃になると、「ふげん」の建設工事は、順調に進み、原型炉の次の開発ステップとして、ATR実証炉の建設計画の話を本格的に打ち出すことが可能な状況になってきた。事業団法においては、実用炉の研究開発は除かれていた。このため、原型炉以降の大型炉の概念設計と研究開発は、原型炉の設計・建設の結果を評価し、ATRの実用化を進める場合の問題点を指摘し、必要な提言をするという立場から、大型炉の評価研究を進めた。この研究は、「新型転換炉評価研究」として予算が付き、実質的なATR 実証炉の基本構想、概念設計が、昭和48(1973)年〜 54(1979)年


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