第10章 ATR実証炉プロジェクト

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・原子炉冷却設備:原子炉冷却系は、図10.2.4に示すように互いに独立した2ループ構成で、総数616本の圧力管の半数ずつが、それぞれのループに接続されている。各ループ共再循環ポンプ、ウォータドラム、入口管、圧力管集合体、出口管、蒸気ドラム、下降管等で構成されている。原子炉冷却材は、再循環ポンプによりウォータドラムに送られ、ここで各入口管に分配され、それぞれ圧力管集合体に供給される。冷却材は、圧力管内を上昇しながら燃料により加熱されて沸騰し、蒸気と水の二相状態で出口管を経て蒸気ドラムに至る。蒸気ドラムで蒸気と飽和水に分離され、蒸気はその湿分を分離したあと、主蒸気管を通ってタービンへ送られ、飽和水は、タービン系から戻ってきた給水と混合し、下降管を経て再循環ポンプに入る。
・工学的安全施設:工学的安全施設は、非常用炉心冷却設備及び原子炉格納施設から構成される。非常用炉心冷却設備は、高圧注水系、低圧注水系及び急速注水系からなり、原子炉冷却材喪失事故時に原子炉冷却系内に冷却水を注入することにより、燃料及び燃料被覆の重大な損傷を防止する。原子炉格納施設は、原子炉冷却設備機器を収納する気密耐圧構造の原子炉格納容器、原子炉冷却材喪失事故時に原子炉格納容器内圧及び温度を低減させる格納容器スプレイ系、放射性物質の外部への放出を低減させる格納容器空気再循環系、アニュラス排気系等で構成される。
 
10.3 実証炉の研究開発と新型転換炉技術確証試験1)
 実証炉の研究開発は、動燃が、昭和61 年度まで、設計改良等により設計内容が「ふげん」と異なるシステム・機器等について、「ふげん」の開発経緯及び成果を基に実証炉設計を確証するために行ってきた。具体的内容は、第9章に示す。
 これらの動燃における実証炉の研究開発成果を受けて、昭和62年度から新型転換炉技術確証試験(以下、「確証試験」という)が開始された。確証試験は、通商産業省(現経済産業省)が予算措置を講じ、電源開発が受託して、ATRに特有な機器・設備、安全上重要な機器・設備について安全性等の確証試験を実施し、その健全性、信頼性、安全性等を確証することにより、実証炉の円滑かつ安全な設計、建設、運転等に資することを目的として実施された。
 確証試験は、主要機器・設備確証試験、プラント運転管理手法の確証、炉心特性確証試験及び安全性確証試験からなり、このうち、動燃の技術、施設等を用いて実施する必要がある試験については、動燃が、電源開発の委託を受けて実施した。動燃が実施した試験の概要は以下のとおり。
・主要機器・設備確証試験:原子炉本体を構成する重要機器である圧力管材料(HT Zr|2.5wt%Nb)について、各種条件下で破壊靭性、疲労き裂進展特性等の試験を実施するとともに、「ふげん」で照射して照射後試験を実施し、材料特性を確認した。


図10.2.4 原子炉冷却系概略系統図


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