第10章 ATR実証炉プロジェクト

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図10.2.2 原子炉本体構造図

「ふげん」と同様の構造であり、減速材である重水を収容するカランドリアタンク、その上下・周囲を取り巻いて放射線及び熱の遮蔽体となる鉄水遮蔽体、これらを上下に貫通する圧力管集合体より構成される。原子炉本体構造を図10.2.2に示す。カランドリアタンクは、高さ約5m、直径約8mのステンレス鋼製円筒容器で、616 本のジルカロイ製カランドリア管が上下の管板にロールドジョイント法によって接合されている。各々のカランドリア管の内側に圧力管集合体が挿入されている。圧力管集合体は、ジルコニウム・ニオブ合金製の圧力管と、これに接続するステンレス製の上部及び下部延長管で構成されている。原子炉冷却材は、下部延長管の入口ノズルから入り、圧力管部で燃料を冷却しつつ沸騰して二相流となり、上部延長管から出口管へ流れる。燃料交換は、原子炉停止時に原子炉下方より行う。このため、圧力管集合体下部には遮蔽シールプラグが装着されており、燃料交換時に、燃料交換機によりこれを着脱して燃料交換行う。
 実証炉の燃料は、MOX燃料とし、設計にあたっては「ふげん」、海外炉等での照射試験の成果を反映している。燃料集合体は、図10.2.3に示す

 


図10.2.3 燃料集合体

よう同心円状に配列した36本の燃料要素、これらを支持する1本のスペーサ支持管、上下のタイプレート及び12 個のスペーサから構成されている。燃料要素は、MOXペレットとジルカロイ製被覆管からなり、炉心平均核分裂性物質量は、初装荷燃料で約2.6wt%、取替え燃料で約3.3wt%である。取替燃料は、出力分布を平坦化するため、中間層の燃料要素の一部にガドリニア添加燃料を採用している。
・反応度制御系:原子炉の出力制御や停止を行う反応度制御系は、制御棒系及びホウ酸制御系で構成される。制御棒系は、原子炉の起動・停止・緊急停止を行う停止棒(吸収材:炭化ホウ素)と出力調整を行う調整棒(ステンレス鋼製)からなる。
 ホウ酸制御系のうち、ホウ酸濃度制御系は、減速材へホウ酸を注入・除去することにより原子炉の起動・停止・燃焼反応度補償を行い、ホウ酸急速注入系は、減速材へホウ酸を急速注入することにより原子炉を停止する。



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