第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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に少なく、その健全性に影響ないことを定量的に把握することができた(図9.6.10参照)。
(8) 原子炉冷却系の化学除染法の開発
 「ふげん」における化学除染を支援するため、「ふげん」と同じキレート系希薄液除染剤の「クリデコン203」を使い、除染性能、「ふげん」構成材料の健全性、廃液処理等について検討した。除染剤濃度、除染時間などを変化させて、除染前後の腐食などを調べ、圧力管や入口管の材料、水素遅れ割れ性、SCC(応力腐食割れ)、ロールジョイント部の気密性及び健全性に問題ないことを確認した。
(9)供用期間中検査装置(ISI)の開発
 「ふげん」の供用期間中検査技術(ISI)の開発には、次の3つの課題があった。
圧力管モニタリング装置の炉外作動試験及び供用前検査への利用
圧力管モニタリング装置の小型化
1次系機器の供用期間中検査装置の開発
 大洗の圧力管モニタリング班が、まず直面したのは、の課題を消化することであった。
圧力管モニタリング装置の炉外作動試験及び供用前検査11)-14),16)
 昭和45年(1970年)から開発が始まった試作圧力管モニタリング装置は、メーカーにおける試作を終えて、昭和49年に、大洗工学センターの圧力管モニタリング試験棟に搬入された(写真9.6.4参照)。こ



写真9.6.4 試作圧力管モニタリング装置

の装置は、定検時に「ふげん」の炉心の下部に設置され、炉心下方から検査装置を炉内に挿入する仕組みであり、総重量は、20トンに達する巨大なものであった。この試作圧力管モニタリング装置を「ふげん」の供用前検査に使用することになっていた。大洗工学センターにおいては、この装置の作動試験及び検出器の校正等を実施して供用前検査期日に間に合わせなければならなかった。検出器は次の3種類である。
圧力管壁の体積検査(超音波探傷)
圧力管の寸法変化検査(内径、真直度)
圧力管内表面検査(テレビによる内表面観察)
 圧力管モニタリング班の直営作業によって無事に諸試験を終え、「ふげん」に搬入され、昭和52(1977)年、予定通り供用前検査を終了することができた。
圧力管モニタリング装置の小型化17),18),20)
試作圧力管モニタリング装置にはいくつかの技術的問題があった。
装置が空気中仕様であるため、当該圧力管の冷却材を抜かなければならない。
そのためには、入口管と出口管にアイスプラグを施して、冷却材の凍結によるプラグをする必要があった。HTLで、その可能性を評価する実験を行ったところ、凍結には時間が掛かるばかりでなく、流体の条件によっては凍結できない領域があった15),19)
20トンと巨大なため、炉心下部で組み立てる大勢の作業者が必要になり、長時間を要するため、限られた定検期間では無理であり、作業者の被ばくも無視できなくなる。
 そこで、燃料交換機を利用した超小型の圧力管モニタリング装置を考案した。種々のアイディアを集めて次のような構想に到達した。
(イ)全体として1/100の小型化を目指す。(燃料集合体と同じ重量)とする。
(ロ)水中検査方式とする。(アイスプラグ不要)
(ハ)検出器と駆動装置を一体化してコンパクトにまとめる。
(ニ)全体を三重筒構造にして、全長5mのストロークを駆動させる。
(ホ)検出信号やテレビの映像信号などは、時分割してケーブル1本で外部に取り出す。
(ヘ)装置本体を燃料交換機で圧力管に装着したあと、遠隔操作で、装置本体に信号を伝達するプ


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