第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

帯

9


時間で十分その健全性は確認できる。
 
CTLにおいては、燃料集合体を装荷したチャンネルが、そのまま圧力管集合体の耐久試験に用いられた。炉の稼動率を80%として、その5年分に相当する35,000時間を越える耐久試験を行い、ロールジョイントの健全性を確保していることを確認した。
 この圧力管集合体の健全性を、更に確認するため、圧力管ロールジョイント部のLBB(破断前漏洩)に関する試験を行った。実機と同じロールジョイント部試験体を二通り用意して、高温高圧水の雰囲気でLBB試験を実施した。一つは、水素富化(約200ppm)をした試験体、もう一つはロールジョイント部に50mmまたは70mm長さの鋭い欠陥を入れた試験体である。
 その結果、亀裂進展は、非常に遅いこと、CCL(限界亀裂長さ)は50mm以上であり、LBB性を有することを確認した。
(5)シールプラグの性能確認及び耐久試験
 シールプラグは、圧力管集合体の下端部に取り付



図9.6.5 シールプラグ構造図



写真9.6.3 「ふげん」用シールエレメント

けられ、原子炉一次系冷却材の圧力バウンダリを構成する重要な部品機器である。したがって、シール性能に優れ、確実に着脱できること、耐圧機能に信頼性があることの3つが要求される。ふげんのシールプラグの構造を図9.6.5に示す。
 耐久試験の目的は、長時間の試験によって、シール性能の経時変化、腐食による劣化及び写真9.6.3に示すシールエレメント(Ti-6AL-4V)の外径変化等を確認し、シールプラグの総合的健全性を実証することである。
 耐久試験は、実機の高温高圧水循環(シール部温度:200℃、圧力:72kg/cm2)を模擬した条件下で、実物のシールプラグを用いて、最長15,000時間にわたり実施した。耐久試験中のシールプラグからの漏えい率は、最大で2.5cm3/h程度であり、最小は検出限界以下であった。このようにしてシールプラグ性能が良好に維持されることを確認した。
 この他、ボールラッチの脱着機能、圧力バウンダリの耐圧機能、応力緩和によるシールエレメントの外径増加量、圧力管シール面の健全性等についても良好であることを確認した。実証炉のシールプラグ設計にこのような知見と経験を、十分に反映することができた。
 現在、シールエレメントは、チタン合金が使用されているが、開発初期の頃は、テフロン製のV型パッキンが考えられていた。しかし、有機材料は柔らかく、シール性能には優れているが、熱サイクルが加わるとシール性能は低下した。さらに、放射線下においては、106R程度のガンマ線の集積線量でフッ素イオンを溶出することが判明した。このテフロン製は、圧力管や燃料への影響を勘案して諦めることになった。そこで、シールプラグ設計の根本に戻り、シール性、耐久性、耐放射性、耐熱性、構造機能、保守点検性等の観点から総合的に評価して、金属を使用した方式に変更し、カナダの方式を参考にしながら開発した。
 上記の機能のほかに、圧力管下部延長管(材料:SUS403Mod)とシールプラグ本体(材料:SUS630)の間のカジリの防止のため、シールプラグ本体表面を窒化処理して硬化した。その結果、耐食性が劣化し、そのサビによってわずかの隙間しかない圧力管下部延長部内面とシールプラグ本体外形との間にカジリの問題が発生するおそれがあった。そのため、カジリに直接関係する摺動部だけを窒化することにしたが、窒化処理によってシールプラグ本体には局


帯
478

前頁

目次

次頁