第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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保持力が増加すれば、フレッティング瑕は全体的に減少する
保持力が0.3〜2kgあれば、瑕深さは急激に減少する
保持力がゼロに近付くと瑕深さは急増する
などが明らかになった。
 どのようにしてバネ力を長く保持できるようにするかが、スペーサ設計の最大の眼目となり、バネの形状、材質、製作精度等のあらゆる点から、設計が吟味された。スペーサの試作は、第1次試作のグリッド型スペーサに始まり、リング型、2次試作、3次試作等と試作を重ねて、全部で30を超える試作を行



図9.6.3 フレッティング瑕深さの経時変化

った。試作のポイントは、スペーサのバネ力をどのように長期にわたって安定に保つかであった。
 燃料設計・試作が進むにつれて、次第にバネ設計技術が向上してバネ力を保持できるようになり、第4次設計で、28,000時間の耐久試験でも十分許容値を超えないことが確認できた(図9.6.3参照)。
 その後もスペーサ試作を続け、伝熱特性改善のための流体混合促進翼(ミキシングベーン)の形状改善、燃料棒配列の最適化等の種々の試みを行った。
(4)圧力管集合体の耐久試験
 ATRにおいては、圧力管集合体は、燃料集合体を内包し、軽水炉の圧力容器に相当する役割を持つ重要な機器である。圧力管集合体は、図9.6.4に示すように、中性子の吸収が少ないジルコニウムとニオブ合金が、炉心部分に用いられ、ステンレス鋼(SUS304)が、炉外の1次系配管に用いられている。この2つの材料は、溶接で接合できないため、「ふげん」においては、ロールジョイント接合法を用いて接合した。ロールジョイントの中間材として、13クロム系ステンレス鋼が有する問題点(低温靱性)を改善した13%クロム-3.5%ニッケルのステンレス鋼(SUS50Mod)が用いられている。
 圧力管集合体は、燃料と異なり、炉心本体と同様に炉心寿命まで用いられるので、耐久試験に要する時間は、相当に長くなる。しかし、現実的には数万


図9.6.4 「ふげん」圧力管集合体


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