第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発![]() |
第 9 章 |
(![]() 「ふげん」を用いてマイクロホン信号に対する雑音を測定した結果、以下のことが明らかになった。 (イ)入口管保温箱の中の騒音源は、格納容器内冷却ファンである。このファンを起動すると、騒音レベルが約60dBから70dBまで増大する。 (ロ)入口管保温箱の外の騒音源は、再循環ポンプのモータである。再循環ポンプの運転モードを「低速」(450rpm)から「高速」(900rpm)に切り換えると、騒音のレベルは、約80dBから100dBまで増大する。 (ハ)「ふげん」で観測された突発型雑音は、原子炉冷却系の温度を変化させる時に発生するもので、波高増分が、7dB、継続時間が0.15秒以下である。 ( ![]() 高放射線下の常温から300℃の雰囲気で使用でき、市販のマイクロホンと同程度の感度のコンデンサ型マイクロホンを開発した。振動膜にステンレス箔、背電極にチタン、絶縁物に耐熱ガラスを用いている。このマイクロホンに対して次の試験を行った。 ![]() ![]() ![]() ( ![]() マイクロホンによる検出法により、安全評価において対象となる任意の場所で発生する10kg/s以上の漏洩を、1秒以内に10dB以上のSN比で検出できることが明らかになった。ここで開発されたマイクロホンによる漏洩検知技術は、旧ソ連型炉の安全性向上に関する日本の国際協力の一つとしてロシアのRBMKの漏洩検知システムに適用された。 (6)シビアアクシデント研究17),18) ATRのシビアアクシデントは、軽水炉に類似した事象進展になるものが多いと考えられるため、軽水炉の評価法を基本にして、ATRに特有なシステム、機器構成、または炉特性を十分考慮した評価を行うことができるようにした。この研究を進めるにあたり、代表的な2つのシナリオを設定した。 ケース1:冷却材喪失事故+ECCS機能喪失 ケース2:反応度上昇事故+炉停止系機能喪失 |
ケース1は、冷却材喪失が生じたあと、ECCSや補給水を用いたいかなる崩壊熱除去もできないシナリオである。ケース2は、固体制御棒とバックアップのほう酸急速注入が期待できない過出力のシナリオである。 これらのシナリオを解析できるようにするため、ATRに特有な現象について試験を行い、相関式を作ると同時に現象の理解を行ってきた。特にATRの炉心は、多数の管群で構成され、周囲に減速材の重水を保有しているため、ケース1に対しては、重水冷却系が、燃料冷却のヒートシンクとして期待できる。また、ケース2に対しては、出力が上昇しても、圧力管が壊れ、軽水が重水中に噴出することによって、大きな負の反応度が投入され、原子炉は自動停止する。このような事象推移が、軽水炉とは異なってくる点を考慮に入れた。 ケース1において、重水系による炉心の冷却性能の評価には、過熱された燃料から圧力管及び圧力管からカランドリア管への輻射伝熱、過熱による圧力管のふくれ、圧力管のふくれによるカランドリア管との接触伝熱並びにカランドリア管の表面限界熱流束の評価が必要になる。安全性試験装置を使用して、これらを模擬した試験により熱伝達にかかわる特性値を測定し、その相関式を既述のコードに適用して、プラントの熱流動評価を行うことができるようにした。 ケース2において、一次系の冷却材が重水中に噴出した場合、核計算によって、重水を排除する効果と重水を劣化させる効果により、負の反応度が入ることが明らかになっており、炉は直ちに停止すると考えられるため、実験に基づいた解析手法の開発を行ってきた。 (7)おわりに LOCA-ECCSに関する試験研究が、特定の実機を対象としている場合、実規模試験は、現象解明と性能評価法の開発に極めて有力である。「ふげん」の安全審査当時は、軽水炉ECCSの評価においても、実験的、理論的データの充実が求められていた時期であったが、模擬性の高いATR安全性実験に基づくECCSの評価は、データの信頼度と適切な裕度を持った評価であると認められた。また、安全防護機器の試験においては、ATR安全性試験装置に国産弁の試作品を取り付け、事故を模擬した条件下で作動試験を繰り返し、性能の向上と確認に反映させた。 「ふげん」の運転開始直後に起きたTMI事故の際は、国内の軽水炉に準じて、「ふげん」に対しても |
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