第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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図9.5.3 低流量時のドライアウト特性


 再冠水熱伝達試験で、再冠水速度、冷却水温度、燃料温度、燃料体出力等をパラメータとして、並列流路条件で冷却特性を測定した。ターンアラウンド後の熱伝達率の再冠水速度に対する依存性及び燃料集合体の軸方向6か所で測定した結果を図9.5.4に示す。平均熱伝達率は、再冠水速度の1/2乗に比例しており、この結果に基づいて相関式を作成した。
蒸気ドラム内流動12)
 下降管への蒸気巻き込みは、気水分離器からの落下水によって、水面下に発生する気泡の巻き込みに



図9.5.4 ターンアラウンド後再冠水熱伝達率

よるキャリアンダーと、水位低下時の渦による巻き込みがある。キャリアンダー率の算定は、炉外試験及び「ふげん」での測定結果を基に作成した相関式を用い、渦巻き込み量は、渦形状をモデル化した計算方法を用いる。
 一方、主蒸気管への液滴巻き上げ量の算定には、実規模試験によって得られた気水分離効率及びスクリーンドライヤ効率を用いている。蒸気ドラムの水面下のボイド率分布は、気泡の上昇速度を考慮して計算する。
ECC水注入時の熱流動
 下部ヘッダーは、基本的に熱平衡状態にあるものとしてモデル化している。しかし、ECC水が、下部ヘッダーに注入されると、下部ヘッダー内は、水蒸気とサブクール水が混在する熱的非平衡状態になり、蒸気の凝縮反応が進行する。この場合、凝縮率は、蒸気と水の接触面積に比例するという仮定を用いて、熱的非平衡状態をモデル化し、サブクール水、飽和水及び蒸気の存在量の時間変化を計算している。ECC水の注入によって、下部ヘッダー内液位が上昇し、入口管取り付けノズル位置よりも高くなると、冷却水は、入口管に流出し始め、やがて炉心に到達する。
逆止弁閉鎖時の水力特性6)
 最大口径配管である下降管の破断時は、下部ヘッダー入口部に設置されている逆止弁が閉鎖して、冷却材が、炉心から逆流することを防止するとともに、下部ヘッダーに注入されたECC水が、炉心をバイパスして破断口から流出するのを防ぐ。破断直後の逆止弁閉鎖特性の解析は、逆止弁の運動方程式と二相流体の流動基本式を連立して解き、逆止弁閉鎖挙動及びそれに伴う二相流下における水撃圧力上昇を計算する。破断直後の数百ミリ秒の短い期間の逆止弁挙動を解析するため、圧力波伝播が考慮できるように、特性曲線法に基づいた解法を採用している。
LOCA解析コードの検証
(イ)解析コードの構成
 実規模試験に基づいて作成した解析モデルは相関式を組込んで、LOCA解析コードを開発した。主要な解析コードの役割と相互の関係を図9.5.5に示す。
 ブローダウン挙動の解析のうち、大破断に対して、熱平衡に相関スリップを考慮したSENHORコード、中小破断に対して、準定常を仮定して高速化を図っているLOTRACコードを開発した。



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