第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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装置に取り付けて、50回の作動試験を繰り返し、吹き出し圧と吹き止まり圧の再現性を確認した。
 逃し安全弁から吹き出した蒸気は、14インチの配管を通って蒸気放出プールに放出されて凝縮する。この系統の配管とプールを模擬した装置を安全性試験装置に設け、蒸気凝縮性能を調べるとともに、配管に加わる放出反力、プール壁が受ける衝撃力を測定して次の結果を得た。
(イ)ノズル直径の3倍の水浸長があれば、蒸気は十分凝縮する。「ふげん」のノズル先端は1mの深さにあるので、ほぼ完全に凝縮するといえる。
(ロ)放出時にノズルが受ける反力は、ノズルが1本の時が最も大きく、最大で1.2トンとなるが、ノズルの支持構造上問題となる値ではない。
(ハ)プールの底面が受ける衝撃圧力は、ノズル先端からの距離が長くなると大きく減衰し、2mの場合0.1kg/cm2であり、「ふげん」は、3mになっているので問題となる値ではない。
 以上の結果、「ふげん」の蒸気放出プール、逃し配管及び支持構造の設計の妥当性が実証された。
圧力管破断時の熱流動特性及び構造健全性
「ふげん」体系における圧力管破断時のカランドリア内挙動
 圧力管が1本破断した場合を想定した、事故時の炉心構造物の健全性を実証する目的で試験を行い、原子炉冷却水の噴出によって隣接管が受ける衝撃圧及びカランドリアタンクの内圧上昇特性を評価した。
 試験の結果、冷却水の噴出によって受ける衝撃圧は、破断部に向き合っている面が最も大きいが、最大口径破断の場合でも20kg/cm2にすぎなかった8)。試験後、隣接管が、変形、損傷等を全く受けていないことを確認した。したがって、圧力管が仮に1本破断したとしても連続破断は起きない。
 また、圧力管からの冷却材の放出によって、カランドリアタンクの内圧が上昇すると、ラプチャディスクが、確実に破れることを確認した。
圧力管破断時のカランドリア管の健全性
 圧力管破断時に、カランドリア管が受ける負荷は、圧力管が衝突する時の力、すなわち、ジェット力、冷却材が充満する際のアニュラス部圧力及び熱応力であると想定される。これらの負荷挙動を解明し、評価手法を確立することを目的として、実寸大の口径の圧力管及びカランドリア管を用い、更に燃料集合体を模擬した体系において、冷却材の圧力を5MPa、ボイド率を0%、50%、100%とした条件で
試験を行った。試験の結果、以下のことが明らかになった。
(イ)カランドリア管にかかる負荷で最も大きいのは、破断後1ミリ秒以内に生じる圧力管の衝突力である。衝突力は、冷却材条件が違っても大きな差はない。
(ロ)次いで大きな負荷は、冷却材が、カランドリア管に充満する時に生じるアニュラス部圧力である。破断の0.5〜1秒後に生じる水撃圧力によって、圧力上昇は最大となるが、その値は、初期圧力の1.1倍程度で、カランドリア管の健全性にとって問題にならない。
(ハ)破断の0.4ミリ秒後に生じるジェット力並びに高温冷却材がカランドリア管に噴出して生じる熱応力は、上記負荷に比べ無視できる。
(4)ATR安全解析コードの開発4)
LOCA解析
 LOCA時の様々な熱流動現象の中で、「ふげん」に特有の重要な現象は、OK水到達前及び到達後の圧力管内熱流動、水位低下を伴う蒸気ドラム内流動並びにOK水注入時の下部ヘッダー内熱流動である。安全解析コードにおいて、これらの熱流動現象は、重要な位置を占めるが、実機条件で、対象とする炉心及び機器を単体ごとに分離効果試験を行い、熱流動モデルまたは相関式を開発した。
 以下に、代表的な熱流動モデルと、解析コードの検証の結果について説明する。
低流量時の燃料ドライアウト特性9),10)
 「ふげん」においては、LOCA時の圧力管内の流れは、下部ヘッダー入口に設けた逆止弁の働きにより、入口管破断を除いて上昇流となる。入口管破断の場合、破断したチャンネルの圧力管の流れは、破断面積によって正流から逆流まで幅広く変化する。図9.5.3は、圧力管の入口流量が停滞する領域を含めて、正流から逆流の範囲における燃料集合体の除熱限界を示したものである。入口流量が停滞する場合の除熱特性は、圧力管内へ落下してくる水と、発生する蒸気の上昇流によって生じるフラッディングによって支配される。最も冷却性が低下するのは、蒸気泡の上昇速度に相当する逆流が生じるような条件であることが明かになった。圧力管出口部でフラッディング条件を考慮した解析モデルを用い、この現象を的確に解析できるように相関式を作成した。実験値と解析の比較を図9.5.3に示す。
)再冠水時の熱伝達特性11)



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