第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発![]() |
第 9 章 |
注入されると、冷却水が、蒸気を凝縮しながら入口管を通って炉心の方へ流れる。下部ヘッダー内は、一時期、蒸気と冷却水が混在する熱非平衡状態になる。冷却水が注入されると、蒸気の凝縮によって一時的に炉心流量が減少するが、下部ヘッダーが満水になると、炉心流量は、冷却水流量と等しくなる。 ( ![]() 「ふげん」においては、OK水注入による燃料冷却は、入口管ギロチン破断を除いて、燃料下部からの再冠水によって行われる。入口管ギロチン破断の場合は、蒸気ドラムから上昇管を経由して流下する冷却水、すなわち上部再冠水によって冷却される。 下部再冠水の冷却特性は、実寸の圧力管と模擬燃料体を使用した1チャンネルの試験において、注水速度、燃料被覆管温度等の影響因子を実機条件を模擬して測定し、ターンアランド後、熱伝達率に軽水炉の評価で使用している値122kcal/hr・m2・℃を使用すれば、保守的に評価できることを確認した。 さらに、LOCA時の被覆管温度上昇によって、燃料集合体最外層16本の被覆管が、一様に膨れて流路を閉塞した場合を模擬した試験を行った結果、流路閉塞部直上部の熱伝達率がやや低下し、クエンチ時間が遅れるが、ターンアラウンド時間の遅れはほとんどなく、燃料被覆管最高温度もほとんど影響を受けないことを確認した5)。 一方、入口管ギロチン破断時の上部再冠水においては、冷却水が、蒸気ドラムの上昇管ノズル取り付け位置を越えると、冷却水が、上昇管を流下し、燃料体を上部から冷却し始める。実寸大の圧力管及び燃料体を用いて、この場合の燃料体冷却についても、冷却水が出口管を流下する速度及び燃料体冷却時の熱伝達特性を試験し、設計評価式を得た。 以上、一連の再冠水実験により、ECCSの冷却性能が、「ふげん」で想定される冷却材喪失事故時の様々な熱流動条件に対して、充分発揮されることが実証された。 A安全防護機器の事故時の特性6) 「ふげん」において、事故時に重要な働きをする主蒸気隔離弁、下部ヘッダー入口の逆止弁及び蒸気ドラムに設置されている逃し安全弁について、それぞれ事故を模擬した条件で作動試験を行い、性能向上に反映させるとともに、設計の妥当性を確認した。 ( ![]() 「ふげん」の主蒸気配管の格納容器出口に、主蒸気隔離弁が設置されていて、主蒸気配管破断事故時 |
に、この弁を閉鎖することにより、原子炉冷却材が格納容器外に放出するのを防ぐ。弁を国産化するにあたり、試作弁による工場試験と主蒸気放出時に弁開閉試験を行い、その結果を実機弁の設計、製作に反映させるともにその性能を実証した。 実験に使用した試作弁は、口径が10インチで実機の16インチよりひとまわり小さいほかは、実機と全く同じである。 工場においては、操作空気源、電源の喪失または弁駆動用スプリングの破損を想定した作動確認を行ったほか、1000回以上の閉鎖操作を繰り返す総合的な耐久性試験を行った。 さらに、安全性試験装置の主蒸気管に試作弁を取り付け、主蒸気管を破断させて蒸気が放出している状態で、弁の閉鎖試験を行った。破断口径を変えて17回の試験を行い、以下のことを確認した。 (イ)弁はあらかじめ設定した時間のとおり5秒間で正常に閉まる。 (ロ)弁棒に蒸気流による引張り力が働くが、強度上全く問題はない。 (ハ)閉鎖時の水撃圧力は極めて小さい。 弁閉鎖後の弁座漏洩量は、当初、15kg/h程度であったが、ディスクガイドを改造した結果、500回以上の繰り返し作動に対しても、漏洩量は検出限界5g/h以下で、設計基準値12kg/hよりはるかに少なくすることができた。 ( ![]() ECCS作動時に下部ヘッダーに注水されたOK水が、炉心をバイパスすることなく、確実に炉心に流入するように、下部ヘッダー入口部に逆止弁が2基直列に取り付けられている。この逆止弁は、下降管大破断時に急閉し、弁の下流側に水撃圧力を発生させる原因になる。しかし、冷却材喪失事故時のような二相流条件下の逆止弁閉鎖特性及び水撃圧力特性に関する研究例はなかった。 そこで、安全性試験装置に逆止弁試験ループを設け、配管の破断による逆止弁の閉鎖特性と水撃圧の測定を行った。試験は、実機と同じスイング型の4インチの逆止弁を使用した(実機は16インチ)。試験の結果、水撃圧力は、一次及び炉心の設計圧力以下であることが明らかになった。 ( ![]() 「ふげん」の蒸気ドラムには、それぞれ3基の逃し安全弁が付いている。同じ型式の弁を安全性試験 |
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