第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発![]() |
第 9 章 |
下部のシールプラグのバックアップ用に装着されている、合成ゴム製の2次シールリングの温度が、設計点(150℃)を超えることが判明した。この温度を越えると、急速にゴムの酸化が進行して、ゴムが弾力性を失うおそれがあったため、これを、設計基準内に収めなければならなかった。「ふげん」の現場に急行し、実際に測定して現象を把握したあと、直ちに対策を講じることとし、彼方此方から現場用の扇風機を借り出して、空気を流して冷却することを企てた。冷却に務めた結果、温度を基準内に収めることができた。 「ふげん」の現場は、場所的に制約が多く、測定は、困難を極めるので、CTLのテスト部を利用して、CTLグループと共同で詳細な測定を試みた。「ふげん」と同様に炉心下部のシールプラグ部に横から空気を流して冷却を模擬し、シールプラグ周辺の温度分布を精密に測定して実際の状況の再現に努力した。CTLは単一テスト部であったので、「ふげん」と同じように多数チャンネルが配列されているのを模擬するため、縮尺モデルを製作して風を送り、相互干渉の具合を観測して評価を補正した。 ![]() ( ![]() 「ふげん」の系統試験段階で、燃料装荷前後に、炉心の各チャンネルの流量配分を確認することになった。といっても各入口管に流量計が設置されているわけではない。各入口管のドレン管と下部ヘッダーのドレン管を利用して、2個のドレン管の差圧から流量を測定しようという考えである。この流量の測定を実現するため、モックアップによる校正を行う必要があった。 ちょうど、「ふげん」の1次系の担当メーカー(日立)に、「ふげん」で使用した1次系配管の残材があったため、「ふげん」と同じ溶接技術者に依頼して、HTLの中に1次系の代表的な配管のモックアップを10組ほど設置した。溶接の裏波も「ふげん」と全く同一にして、二つのドレン間の差圧と流量の間の校正曲線を求めたのである。 「ふげん」においては、この校正曲線を利用して各チャンネルの流量を求め、炉心配分に異常がないことを確かめ、更に解析値と比較して1%以内で一致していることが確認できた12)。 ( ![]() 運転中の「ふげん」の炉心の流量配分を簡単に把握したいという要求から、メーカー〔富士電機(株)〕 |
と共同研究で、炉心入口管に簡単に着脱できる超音波流量計を開発することとなった。 取り付け作業時の放射線被ばくをできるだけ抑制するため、着脱に要する時間は1分半以内を目標にした。着脱部に取りつけた配管温度計の読みから水中の音速の温度依存性を自動的に補正する回路を加えて、約1年の開発期間で完成させ、「ふげん」における測定に供した13)。 (8)「ふげん」炉心流動伝熱特性測定支援のための開発 ![]() 昭和45(1970)年、伝熱試験を開始した大型熱ループは、順調に試験を継続し、20年間で、限界熱出力(バーンアウト熱流束)に関する1万点を超えるデータを採集することができた。また、「ふげん」における炉心流量配分、入口温度等の揺らぎも実測できた。さらに、燃料の製造公差等のデータも十分収集できたので、確率論的熱設計手法の開発に取り組むことができた14)。 各因子は、基本的に独立因子として変動し、各因子の偏差分布は、正規分布を仮定した。最も熱的に厳しくなる組合せが起こる割合を算定し、ちょうど決定論的にバーンアウトに達するという最悪の場合を想定して、バーンアウト発生の確率を算定した。すなわち、ある割合で燃料の損傷を許容した。実際には、設計マージンのため、バーンアウトには至らない。 このようにして、炉心の熱的制限値に確率論的な意味を与えながら、マージンを評価した。この手法は、後に実証炉設計に利用された。この確率論的設計手法の採用により、燃料集合体の限界熱出力に対する設計裕度が20〜30%の割合で合理化できた15)。 (9)その他の伝熱流動に関する開発研究 ![]() 万一、燃料棒が曲がった場合の影響を評価する実験研究を行った。スペーサのリングを細工して、隣り合った燃料棒の間隙を狭めて置き、更に燃料棒の間に突っ張り棒を入れて、燃料棒を人為的に曲げ、限界熱出力に影響するか否かを調べた。燃料集合体の偏心の場合から予想したほどの大きな影響はなく、正規の2.1mmの間隙から相互に接触するまで燃料棒が曲がっても、限界熱出力に影響がないことが分かった。これは、熱的に最も厳しくなるサブチャンネル(燃料棒や圧力管に囲まれた小流路)のすぐ |
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