
図9.4.9 燃料棒曲がりの影響

図9.4.10 下降流の伝熱特性

図9.4.11 流れの安定限界と運転領域の比較
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脇に、熱的に緩くなったサブチャンネルが存在することになり、相互に補完し合うためではないかと考えられた16)(図9.4.9)。
冷却材流動方向の影響
冷却材が配管破断事故等で、急速に流出するような場合は、流量が低い領域で蒸気の浮力による上向き流れとバランスして流れが停滞する領域が存在し、限界熱出力が低下する。それ以上は、上向き流れと同じような冷却特性が得られた17)(図9.4.10)。
クラッド付着及び圧力管クリープ変形の影響
「ふげん」の運転による経時変化などを考慮して、燃料棒表面のクラッド(腐食生成物)付着や圧力管のクリープ変形等を模擬した伝熱流動試験を実施した。実際の腐食生成物と同じ成分、粒径、空隙率のクラッドを開発し、これを燃料棒表面に人工的に付着させて、クラッド厚さの影響を調べた。その結果、燃料棒相互の間隙が0.6mm位までは、限界熱流束にはほとんど影響がないことが分かった1)。
流れの安定性
「ふげん」の上昇管と配管口径、長さ及び曲がり形状を実規模で模擬した試験部を、HTLに付加し、自然循環及び強制循環時の流れの安定性試験を行った。この結果、いずれの場合も出口クォリティの高い領域に不安定領域が存在するが、「ふげん」の運転領域では、流れが十分安定することを確認した18)(図9.4.11)。
サブチャンネル解析コードの開発
当初、燃料集合体の各燃料棒の間隙(サブチャンネル)における熱水力現象を解析するサブチャンネル計算コードとして、COBRA- を使用したが、その後のHTLでの研究開発を基に、より精度良く、詳細な解析ができるサブチャンネル解析コード(FIDAS)を開発し、実証炉燃料の解析に使用した3)。
(10)おわりに
HTLでは、圧力管内の燃料集合体の伝熱特性について、実規模試験体を用いて、種々の実験と解析を行い、また、そのための実験技術の開発、解析コードの開発を行った。研究開発の過程でいくつもの技術的課題に遭遇したが、それらを一つ一つ解決し、ATR燃料の熱設計・評価手法とそのデータベースを確立した15)。これらの成果は、「ふげん」の設計・許認可等に反映され、また実証炉36本燃料及びATR大型炉の多数本燃料の熱設計・評価に資された。
HTLにおける研究開発は、実証炉の建設中止に伴い、平成10(1998)年をもって終了し、29年にわた
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