第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

帯

9


が実験値をうまく再現できない理由を解明し、その部分を改良した結果である。これは、マルチセルオプションが、隣接格子間の接触面積の比率を、中性子が、第1回目の衝突を隣接する格子で起こす確率とし、これによって異なる格子間の中性子スペクトルの混合を図っているため、接触面の求め方に任意性が生じ、実験値との良好な一致がみられなかったためである。このため、この比率を熱中性子の流れの比率に改良し、異なる格子間(制御棒を含む格子と通常格子は極端に差がある)の中性子スペクトルの混合を正確に行った。この場合、解析が1ステップ多くなるが、一次元拡散コードCITATIONを用いることにより、解析精度は、表9.3.2に示すように、±2%以内となっている。
動特性パラメータ
 DCA炉心にパルス中性子発生装置で中性子を打ち込み、各種の炉心体系について、実効遅発中性子割合βeffと即発中性子寿命lpの2つを測定した。格子ピッチ、ボイド率、ウランとプルトニウムの燃料種類、燃料配置の違い等のデータを集積し7)、計算精度の評価を行った。
局所出力ピーキング
 DCAを一定時間運転すると、燃料棒中に出力に応じた核分裂生成物が蓄積される。この核分裂生成物からのガンマ線を、検出器を備えたガンマ・スキャンニング装置で測定し、クラスター燃料集合体内の出力分布を求める。DCA実験においては、ウラン燃料はもとよりプルトニウム燃料についても広範囲に上記の測定を行い、データを集積した。また、箔放射化法を応用した高精度のガンマ・スキャンニング法8)を開発してデータの質の向上を図った。
 クラスター型燃料は、減速材から分離されていること、大型であることから、集合体中央部での熱中性子束の低下は避けられないが、「ふげん」の設計は、2色の富化度配列方式を採用し、出力の平坦化を図り、局所出力ピーキング係数を低減させている。すなわち、中央の2層は0.80w/o、最外層は0.55w/oとする構成である。
 上記のDCAで開発した高精度ガンマ・スキャンニング法でこのプルトニウム富化度配列の測定を行い、局所出力ピーキングを6%低減できることを確証した。また、熱中性子スペクトルの変化に立入った正確な出力分布の測定が、プルトニウム燃料使用によるボイド反応度改善のメカニズム解明に寄与したことはの項で述べたとおりである。


図9.3.11 単位格子内の熱中性子束微細分布

格子パラメータ
 臨界量、温度係数、制御棒反応度等の炉心全体に関する核特性の計算を行う場合、非均性の高い個々の単位格子(単位セル)は、あらかじめ厳密な計算を済ませて、均質化した少数組の組定数の形で取り扱う方法が、一般的である。そのため、初めに行う単位格子の計算の厳密さと精度が、すべての計算の精度を支配することになる。
 この単位格子の測定量の計算精度評価のため、種々の格子パラメータがある。これは、燃料棒中の各種反応率分布・比を与えるδ25、δ28、ρ28等のミクロパラメータ、単位格子全域にわたる熱中性子束微細分布、熱中性子のエネルギー分布の情報を与えるスペクトル・インデックス等である。また、これらの実験値に計算値を取り入れて組み立てられる格子パラメータとして、熱中性子利用率、共鳴を逃れる確率等の4因子、その積である無限増倍率(k∞)がある。
 格子ピッチ、ボイド率、濃縮度を変えて、ウラン燃料とプルトニウム燃料の各々について16種の基本格子を選び、総合的に格子パラメータの測定を行った1)。熱中性子束微細分布の測定に関しては、圧力管、カランドリア管内壁への照射箔セット法の開発3)と重水中の照射箔セット用軽量ホールダーの開発3)が行われ、測定精度は飛躍的に向上した。プルトニ



帯
453

前頁

目次

次頁