第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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材の温度係数が測定できるようになったため、その挙動が実験的に明確になった5)
 重水減速材温度の挙動を図9.3.8に示す。ボロンなしのクリーン格子において初め正の値をとる重水温度係数が、約40℃で零となり、更に高温では負の値となることが分かった。この傾向も、またその値も、図に示されているように詳細計算コードの値とほぼ一致する5)。また、ボロン入りの炉心では、値は正側にずれ、計算値と大体一致する。このDCA実験により特に、「ふげん」の運転温度60℃付近では良い一致を示すことが確認された。重水減速材の温度係数の温度依存性を実験的に解明したことは、DCA実験の大きな成果の一つといえよう。
)制御棒の反応度効果



図9.3.9 制御棒2本の反応度の干渉効果
(0%ボイド炉心の例)



図9.3.10 制御棒挿入時の熱中性子束分布
(9本装荷)

 「ふげん」で使用されている制御棒は、ボロン・カーバイト(B4C)をつめた棒を二重の同心円環状に配列したものであるが、DCAにおいて同じ構造のものを用いて、系統的に非常に多くの実験データの蓄積を図った。これは、米国サバンナリバーの臨界実験装置を利用した予備実験に続くものであった。
 制御棒の反応度効果は、炉心内での挿入位置、炉心の状態によってもいろいろ変化する。DCA実験により、冷却材ボイド率が大きくなると反応効果が大きくなること、2本の制御棒の相互干渉効果として間隔により、正の効果または負の効果が発生することなどを定量的に測定し、計算手法の確立のための基礎データを得た。干渉効果の1例を図9.3.9に示す。この図より、制御棒挿入位置がお互いに近い場合には、制御棒の干渉効果が小さく、ある一定の路離の場合には、干渉効果が大きくなることが分かる。
 制御棒は、出力の平坦化、一部余剰反応度の抑制、原子炉の運転・停止に使用されるため、多数挿入した場合の、中性子束分布との関係及び反応度効果を正確に計算しなければならない。「ふげん」の設計計算は、吸収面積法という近似手法を採用し、DCA実験との比較により精度評価を行った6)
 実験値と計算値の比較を図9.3.10に示す。「ふげん」設計値は、広範囲なDCA実験データとの比較検討の結果、±10%という精度を持つことが分かり、その妥当性、安全性を確認した。
 制御棒による中性子の吸収は、非常に局所的な現象であるため、これを正確に計算するためには、制御棒と隣接する4つの単位セルの非均質構造を厳密に取り入れたモデルを使用する必要がある。詳細計算コードによるこのようなモデル(WIMS-D、マルチセルモデル)を使用した計算は、「ふげん」起動試験に際して実施され、±3%の精度が得られることが、併せて確認されている。
 この精度に至ったのは、従来のマルチセルモデル

表9.3.2 改良マルチセル方式による制御棒価値解析精度(25cm格子ピッチ、0%ボイド、5sPu炉心)




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