第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発![]() |
第 9 章 |
![]() 図9.3.3 UO2燃料を装荷したDCA炉心のボイド反応度の変化 ![]() 図9.3.4 プルトニウム燃料装荷によるボイド反応の負側移行と計算値との比較 |
た。この精度評価に基づいて、「ふげん」設計の妥当性を、確認し、また起動試験の結果が、設計値内に入っていることを確認した。
ボイド反応度については、プルトニウム燃料の装荷が大きな負の反応度効果、すなわち、安全上好都合な働きをすることが、DCA実験によって初めて確認され、その度合いが計算コードと比較2)された。プルトニウム燃料の装荷体数の増加に従ってボイド反応度が順次負側に移行していく様子を図9.3.4に示す。プルトニウム燃料は、0.54%富化(スタンダード・グレード)のものであり、また、核分裂性物質の含有量は1.2%濃縮ウランに相当するものである。このように、燃料の種類が、ウランからプルトニウムに変わると、負のボイド反応度が発生する。この発生理由(メカニズム)を、DCAにおける解明すべき大きな課題としてとらえ、次々に研究が進められた。 主なものは、プルトニウム燃料中の熱中性子束ミクロ分布の測定3)、スペクトル・インデックスδ49/25の測定4)、局所出力ピーキングの測定等であり、これらを総合した結果、負のボイド反応度のメカニズムが解明された。プルトニウムは、ウランと同様に1/v型吸収断面積の外における0.3eVの位置に巨大な共鳴吸収断面積を持つ。熱中性子が、重水減速材領域からのみ供給されている100%ボイド率では、この共鳴エネルギーを持つ中性子がクラスター燃料の外周(第3層)において表面吸収され、ほとんど内部(第1、2層)へは浸透しない。つまり、100%ボイド率の状態では、クラスター燃料内層にあるプルトニウムの共鳴吸収による核分裂断面積は、それほど正の反応度に寄与することができない。 一方、0%ボイド率の状態では、外層で共鳴吸収を受けた結果、歪んでしまった中性子エネルギー・スペクトルは、軽水冷却材により再度散乱を受け(エネルギー的には上下方向の散乱)、歪のかなりの部分が回復する。つまりクラスター燃料の内層にあるプルトニウムの共鳴吸収が無駄にならず、正の反応度に寄与する。ボイド反応度は、0%と100%ボイド率における反応度の差であるため、プルトニウムを含む燃料の方が、100%ボイド率に移った時の反応度の低下は大きいことになる。すなわち、1/v型吸収断面積(表面吸収効果はない)のみのウラン燃料に較べて、大きな共鳴吸収を持つプルトニウム燃料の方が、ボイド反応度を負側へ移行させることになる。 |
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