第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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段階においては、動特性解析コード(FATRAC)等の解析コードによる最確値評価によりプラントの運転状態の予測解析を行い、試験計画の立案に寄与するとともに、実機運転データに基づく解析コードの検証に備えた。系統機能試験においては、工学的安全防護設備の試験、炉心流量配分の測定等に協力し、起動試験においては、臨界点、各種反応度係数の測定等に協力し、それまでに開発してきた設計、解析手法がおおむね良好であることを確認した。
(2)ふげんの本格運転開始から実証炉確証試験開始まで(昭和54年〜62年)
 第期の大洗工学センターにおける研究開発は、実証炉に向けた研究開発に重点が移って行った。「ふげん」にかかわる研究開発は、「ふげん」の起動試験及び本格運転開始後の運転によって得られた実績値と運転状態の解析値との比較評価、また必要に応じて大洗工学センターの試験施設を用いて試験データの拡張・充実を図り、燃焼の進行に伴う核特性・熱流動特性の変化に関する解析コード、プラント動特性解析コード等の精度評価、解析コード及び設計コード・手法の改良等を行った。
 また、「ふげん」の系統化学除染に対する圧力管集合体等の材料健全性評価試験並びに圧力管モニタリング装置の開発等を実施し、「ふげん」の運転・保守をバックアップした。
 「ふげん」の本格運転開始1週間後の昭和54(1979)年3月28日に起きたTMI事故及び昭和61(1986)年4月26日のチェルノブイリ事故に関して、各種の安全解析等を行った。前者の事故については、配管小破断時の二相流、自然循環炉心冷却及び流量停滞時における炉心冷却に関する研究の重要性が指摘された。ATRに関しては、A安とHTLを用いた試験を行い、このような事象に対しても安全性が十分確保されることを確認した。特に、配管小破断のうち入口管のスタグナント破断事象、すなわち特定開口面積の破断による流量停滞事象については、圧力管型炉に特有な事象であることから、その発生メカニズムや事象進展、事象(配管漏えい)の検出に関する研究開発を行った。
 その結果、小口径配管の破壊力学的研究により、ATR体系ではスタグナント破断は工学的には起こり得ないことを明らかにするとともに、さらに安全性を向上させるため、配管小破断の早期検出法として、配管の破断前漏えい(LBB:Leak Before Break)を検知するマイクロフォン漏えい検出装置を開発した。
 後者の事故については、ATRの炉心解析コード、安全解析コードが「ふげん」と類似しているチャンネル型炉のRBMKに適用できることから、この解析コードを用いてチェルノブイリ炉の核・熱水力特性と事故時のプラント挙動再現性解析評価を行った。これらの一連の解析結果は、後にソ連が明らかにした炉心の諸特性、事故事象データとおおむね一致していた。この動燃の解析評価結果は、逐次、原子力安全委員会に提出され、事故原因の調査・評価作業に反映されるととも、IAEAにおいてソ連が発表したプラント改善策の効果の検討に寄与した3)
 実証炉の研究開発は、「ふげん」の成果を踏まえて、プラントの信頼性、安全性、経済性向上に重点を置いた設計研究、研究開発が進められた。大洗工学センターでは、ATR関係4室のメンバーからなる設計研究グループ(HOP)が大型炉の設計研究を行い、実証炉への設計提案を行うとともに、実証炉開発に関する電力とのATR合同委員会及び国のチェック・アンド・レビューへの支援を行った。また、改良された実証炉において、「ふげん」の技術から採用された36本燃料集合体、ホウ酸急速注入系、蒸気ドラム汽水分離器の性能向上等に関する開発試験を実施し、実証炉設計に反映した。
(3)実証炉確証試験開始からATR開発終了まで (昭和62年〜平成10年)
 昭和57(1982)年8月の原子力委員会の決定により、実証炉開発の建設主体が電源開発(株)に移り、昭和58(1983)年12月に、実証炉設計を動燃から同社に技術移転したことにより、動燃は実証炉開発をサポートする立場になった。
 昭和62(1987)年度からの第期には、実証炉のための研究開発費が通産省の予算となり、その研究開発は、新型転換炉技術確証試験として電源開発(株)から動燃が受託して実施する体制となった。大洗工学センターが受託した技術確証試験は、36本燃料集合体の炉心特性確証試験、圧力管破断試験等の安全性確証試験、圧力管集合体確証試験等である。
 一方、動燃独自に実施した研究は、ATRの特長を生かした実用炉構想の検討、多数本(48本、54本)燃料集合体の研究開発、熱水力解析コード等の改良・高度化の研究開発、シビアアクシデント等の安全研究であった。ATRの解析コード群は、開発初期は、保守的評価に重点をおいた設計コード、安全評価コードであったが、その後、試験データの蓄積と現象解明が進み、第期以降は、現象を忠実に解析


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