第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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について計算された遅延補償型2チャンネル関数の組み合わせである。しかし、障害物による反射・拡散により信号歪みが生じると、時間遅延挙動に大きく影響を与えるため、このアルゴリズムは、実際の効率的な適用とはならない、つまり、そのために多くの計算時間が必要となるからである。
 信号と背景騒音の分解は、背景騒音が、ランダムにピークを分散するため、ほぼ遅延0のピーク(図8.6.11のA)の音源周辺の領域において、難しくなる。しかしながら、図8.6.11のBに示すマルチチャンネルCCFは、増幅ピークの作用の重ね合わせにより作成されるため、信号と背景騒音の分解が容易である。
 マルチチャンネル相関検出手法は、5.5mまでの距離において、SNR<-3dBの信号の検出を可能にする。さらに、チャンネル数が増加するに従い、検出効率が増加することが、図8.6.11のCに示されている。処理時間は、2〜4分と評価され、それは、チャンネル数に依存する。

8.6.6 非定常音波に対する新漏えい検出手法
 
前述の計算モデルは、漏えい孔の等価直径及び冷却材の水力学的パラメータ(圧力、比容積、エンタルピー及び潜熱)による漏えいPWL及び周波数特性に基づいている。このモデルは、放出された冷却材の減圧による沸騰現象に基づいている。提案された方程式(1)の係数は、大洗工学センターにおいて実施された人工的な漏えい孔から放出されたサブクール漏えい水の音響特性から得られたものである。
 前述の漏えい信号は、定常音響を想定したが、これは、実クラックからの微小漏えいを正確に模擬しているわけではない。特に、非定常信号は、ロシアのRDIPE(Research and Development Institute of Power Engineering)における実験(クラックからの0.1gpmの漏えい)で観測された。非定常成分の継続時間は、100〜300ms内で測定された。この現象は、クラック中の2相混合流圧力の局所脈動によると推定された。類似の非定常信号は、実際のき裂から放出される2相混合流の比較的大きな漏えいにおいても確認した。
 そこで、冷却材放出時の様々な状態における漏えいを、より確実に検知するため、マイクロフォン漏えい検出手法による、非定常信号検出への適用性ついて検討した。


図8.6.12 ガボール変換に基づくJoint-Time-Frequency Analysis(JTFA)


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