第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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(1)1時間以内に、0.2gpm(0.046m3/h)の漏えいを検出する能力
(2)1m以内の精度で漏えい位置を特定できる能力
(3)漏えい流量を評価する能力
 目標を達成するため、従来の漏えい音の音圧レベルしきい値法に加え、複数の音響信号の相関を利用する先進的な漏えい検出技術の導入を図った。

8.6.3 「ふげん」の漏えい検出システム
 
図8.6.1のBの部分及び図8.6.1のCの部分に示すように、「ふげん」の漏えい検出システムに、14個の耐高温マイクロフォンが設置されている。この耐高温マイクロフォンは、300℃までの温度及び照射(20R/hの線量及び107Rの積算線量)に耐えるステンレス鋼製振動膜、チタン鋼製背電極や耐熱ガラス絶縁材で構成されるコンデンサータイプのマイクロフォンである。マイクロフォン本体を、図8.6.1のEに示す。
 入口管は、原子炉冷却系の熱損失を最小にするため、保温ボックスに収容されている。したがって、マイクロフォンは、図8.6.1のDに示すように、ボックス内部に直接取り付けることが可能である。マイクロフォン受音部は、高温の環境にさらされるが、送信器はボックスの外側に設置することができる(図8.6.1のDを参照)。
 圧縮空気を用いた模擬漏えい音発生装置を、ボックス内部に設置した。このタイプの模擬音源は、原子炉建屋内における、漏えい音を模擬するための最も安全な方法である。また、この模擬音源は、原子炉運転中に定期的なシステムチェックを行うことが可能である。また、ボックス内における音波の減衰特性を測定することも可能である。

8.6.4 標準的な漏えい検出手法
 
標準的な漏えい検出は、配管周囲の音圧レベル(Sound Pressure Level:SPL)のモニタリングによって、漏えいの際に放出される音響信号を測定するという方法である。
 標準的な検出アルゴリズムの第1ステップは、SPL増加の検出である。測定の際における検出しきい値及び裕度は、背景騒音(Back Ground Noise: BGN)の平均レベル及びばらつきに依存する。第2ステップは、漏えい位置特定である。漏えい位置特定には、マイクロフォン間におけるSPL分布解析を用いる。最終ステップは、推定された漏えい位置で
の音響出力レベル(Sound Power Level:PWL)を予測し、PWLと漏えい流量の相関関係に基づいて、漏えい流量評価を行うものである。
 漏えい音による検出方法は、従来の漏えい検出方法(サンプにおけるドレン水量のモニタリングまたは格納容器内の放射線量レベルのモニタリング)と対照的に、より高い感度で漏えい位置の特定が可能な手法である。特に、標準的な音響検出アルゴリズムは、数秒以内に漏えいを検知することができるため、比較的大きな漏えいが発生しても、原子炉を安全に停止することができる。
(1)しきい値検出手法(Amplitude-based Threshold Detection Method)
 高温高圧サブクール水の漏えいにより、発生するPWLと漏えい流量Qの相関関係は、大洗の試験装置で測定された冷却材漏えいの音響特性に基づいた経験式(1)によって定式化されている。

数式(1)

i:周波数バンド
Ci, ai:係数
D:漏えい口の等価直径
F(P,T):冷却材の熱水力パラメータ関数
P:冷却材圧力(MPa)
T:冷却材温度(℃)
ρ:冷却材密度

 図8.6.2に示すように、以前検討した広範囲の周波数にわたる漏えいと比較して、0.2gpmの仮想漏えいのPWLは、比較的小さい。
 音響伝搬の減衰方程式(2)は、音源からの距離の関数による音波の減衰により特徴づけられる。式(2)において、音響出力レベル:PWLと音圧レベル:SPLの音波減衰差分は、拡散ロス:10log10(1/4πr2)、摩擦ロス:10log10 {exp(-2βr)} 及び入口管サポートにおける伝達ロス:nLs により表すことができる(r:距離、β:減衰係数、n:配管サポートの数)。


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