第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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こで、蒸気ドラム水位が通常水位の状態で、変圧器の点検を実施した場合の感度解析を行う。
余熱除去系、原子炉冷却材浄化系点検の早期開始
 余熱除去系及び原子炉冷却材浄化系のポンプ分解点検または熱交換器の開放点検時に、蒸気ドラムからの取水ラインが開放された場合は、冷却材バウンダリが、機能喪失に至る。過去の定検実績に基づき、これらの系統を点検する時期、期間を変更した場合の感度解析を実施する。
燃料交換期間の延長
 「ふげん」においては、炉心下部からの燃料取出し及び装荷を行うため、この時期の冷却材バウンダリ機能の喪失を考慮している。したがって、燃料交換の期間を変更すると、起因事象の発生頻度も変化するため、過去の定検実績に基づき、燃料交換期間を延長した場合の感度解析を実施する。
 以上の評価を行った結果、最も高い炉心損傷頻度は、平均値の1.1倍程度であり、本評価のために作成した標準工程が、妥当なものであることが確認できた。
AM策の有効性評価
 停止時における炉心損傷頻度低減策として下記項目を選定した。
重水冷却系による炉心冷却効果
 本対策は、「ふげん」に特有な重水冷却系による炉心冷却効果を適用したものである。
格納容器空気再循環系による冷却効果
 本対策は、配管を多く有する「ふげん」の特徴に基づいて、格納容器空気再循環系による炉心冷却を適用したものである。
作業員によるリカバリー
 プラント停止時、多くの作業員が、プラントの点検にあたっている。プラントが異常状態となった場合、運転員以外の保守作業員等によっても、異常認知が期待できる。そこで、運転員以外の作業員による認知及びリカバリーを評価に取り入れた。
予備変圧器からの電源融通
 本対策は、レベル1PSAで考慮されているAM策を停止時に適用したものである。
工程の変更
 事象区分ごとの発生頻度分析結果により、再循環ポンプ点検時の炉心損傷頻度が高くなっていることが明らかとなった。これは、再循環ポンプ点検時に、変圧器点検を行っていることが要因として考えられ
る。
 感度解析により、蒸気ドラム通常水位で変圧器点検を実施した場合は、炉心損傷頻度が低減されることが明らかとなった。そこで、再循環ポンプ点検と変圧器の点検を同時に行わないように工程を変更する対策を摘出した。
 以上より,「ふげん」の特徴である1)重水冷却系による冷却効果を考慮した場合、炉心損傷頻度は、約3/4となることが確認できた。
 また、その他の炉心損傷頻度低減策を取り入れることで、炉心損傷頻度は、約1/4になることが確認された。

8.5.6 結 論
 「ふげん」における確率論的安全評価及びそれらにより摘出されたAM策の有効性を評価した。
 レベル1PSAを実施した結果、「ふげん」の炉心損傷頻度は、IAEAの既設炉に対する基準を満足し、また国内の軽水炉と比較しても十分低く、その安全性を定量的に評価することができた。
 炉心損傷に至る起因事象の中で、最も支配的なものは、外部電源喪失であり、事象シーケンスとしては、過渡事象発生時の原子炉補機冷却系及び格納容器空気再循環系が機能喪失した場合であった。
 また、重水冷却系、配管放熱等の「ふげん」に特有な設備や特徴を有効に利用することによって、どの程度、炉心損傷を回避できるかが定量的に明らかとなった。
 さらに、「ふげん」運転経験データに基づく機器故障率を用いた炉心損傷頻度は、文献値に基づく炉心損傷頻度と比較して、約1/5程度に低減されることが明らかとなった。
 炉心損傷頻度低減策として、支援系統の運用の変更による信頼性の向上及びフェーズのAM策として重要機器の試験頻度の増加、重水冷却系の継続運転手順、手動重水ダンプ、代替注水系による炉心への注水及びECCSポンプ注水手順を整備し、プラントに反映した。
 レベル2PSAの結果から、「ふげん」の格納容器破損確率は、条件付き確率で0.08となり、過酷事故時の格納容器における事故緩和能力を定量的に評価することができた。
 「ふげん」特有の機器による事故緩和機能として圧力管、カランドリア管及びカランドリアタンクによる燃料デブリの保持、配管及び蒸気ドラム等によ


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