第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.5.3 感度解析及びAM有効性評価結果

心損傷頻度の評価に取り込み済みである。ここでは、評価上、取り込み済みのAM策のうち、「ふげん」特有と考えられる以下の3つの対策についての有効性を評価した。
手動重水ダンプ
 起因事象発生時、制御棒不挿入事象が発生した場合において、手動重水ダンプによるスクラムを期待しない場合の評価を行い、手動重水ダンプの効果を確認した。その結果、炉心損傷頻度は、基準ケースとほとんど変わらない結果となり、手動重水ダンプの効果は、小さいことが明らかとなった。
 これは、スクラム失敗の事故シーケンスにおいて、炉心の損傷が、早期に起こるため、運転員が認知するための十分な時間がないことが原因である。
重水冷却系による炉心冷却
 「ふげん」特有の重水冷却系による炉心冷却効果を期待しない場合の評価を行い、重水冷却系による炉心冷却の効果を確認した。その結果、炉心損傷頻度は、重水冷却系を期待した場合の約6倍となった。したがって、重水冷却系は、設計基準事象を越えた事故シーケンスにおいて、炉心冷却に有効であり、重要な設備であることが確認された。
格納容器空気再循環系による炉心冷却
 格納容器空気再循環系及びECCSポンプ手動注水による炉心冷却効果を期待しない場合の評価を行い、これらによる炉心冷却効果を確認した。その結果、炉心損傷頻度は約3.5倍となり、本AM策は有効な対策であることが分かった。
 感度解析結果とAM有効性評価結果を図8.5.3に示す。
8.5.4 レベル2PSA
(1)レベル2PSA評価手法
炉心損傷シーケンスの分類とプラント損傷状態の設定
 「ふげん」は、軽水炉と異なり、炉心に多数本の圧力管、カランドリア管及び減速材(重水)を内蔵したカランドリアタンクを有する。そのため、仮に隔離冷却系、余熱除去系、非常用炉心冷却系等による炉心冷却機能に関する設備が機能喪失し、炉心が損傷した場合も、重水冷却系が作動していれば、重水への輻射伝熱等により崩壊熱を除去できる。これにより、燃料の溶融防止の可能性やもし溶解しても溶融燃料を圧力管、カランドリア管またはカランドリアタンクで保持し、格納容器内への放出を防止できる可能性がある。また、制御棒の挿入が困難な場合においても、重水自動ダンプにより原子炉が停止し燃料溶融、これに伴う格納容器早期破損等を防止することができる可能性がある。格納容器破損頻度の評価では、上記の特徴を適切に反映させたレベル1PSAの評価結果に基づき、プラント損傷状態を設定した。更にそれぞれの損傷状態から格納容器の破損にいたるまでの事象進展を詳細に評価するため、圧力管内及びカランドリアタンク内挙動に対するイベントツリーを展開し、溶融燃料保持の可能性を検討した。
 なお、格納容器破損確率を、炉心損傷発生後の条件付き確率として軽水炉と同等の0.1を目標とした。
 炉心損傷シーケンスの分類からプラント損傷状態の設定に至るまでの検討結果を以下に示す。


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