第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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各冷却ループにおける安全機能を有する系統ごとにイベントツリーのヘディングを設けて、イベントツリーを展開した。
フォールトツリーの作成/評価
 イベントツリーの各分岐確率を求めるため、各系統に必要とされる機能に基づき、フォールトツリーを作成した。前述のように、「ふげん」は、炉心が独立した2ループで構成されているため、事象の推移により系統に要求される機能が変わる。
 このため、イベントツリーの各分岐確率は、同じ系統でも期待される機能により異なる。そこで、イベントツリー解析で想定した各系統の各機能を頂上事象としてフォルトツリーを展開した。
データベースの作成
故障率データベース
(イ)汎用データベース
 フォルトツリーを解析するにあたり、信頼性評価用データベースを作成した。
 基準となる炉心損傷頻度を算出するため、信頼性評価用データベースを、以下の方針により作成した。
 (a)我が国の運転実績が反映された機器故障データがあるものについては、これを最優先に使用する。
 (b)国内データがない場合、機器部品に関しては、NUREG-1150の評価で使用されたASEP等の一般データを用い、電気部品に関しては、機器タイプ及び故障モードに関するデータが豊富なIEEE Std-500 7)をベースとして使用する。
 (c)上記公開文献にデータがない場合はデータが不適切と判断される場合は、LERs(License Event Reports)やWASH-1400のデータを使用する。
(ロ)感度解析用データベース
 「ふげん」の運転実績に基づく、機器故障率データベースを用いて、プラントに蓄積された故障データの炉心損傷頻度に対する感度解析を行う。感度解析において用いる運転実績データベースは、以下の方法により作成した。
 (a)「ふげん」保守管理システムに蓄積されている、運転開始からの運転経験データを使用する。
 (b)全故障記録のうち、設備系統の機能に影響を及ぼす故障を対象とする。
 (c)プラントの安全に直接かかわらない系統の故障も含める。

共通原因故障の取扱い
 機器の故障には単一故障のほかに、共用機器及び同一の支援系統より支援を受けていることに起因する複数機器または複数系統の同時故障、すなわち従属故障と、同じ仕様、同じ製造過程で製造され、かつ同じ環境下で使用することなどによる複数機器の共通原因故障の2つがある。
 前者については、フォールトツリ−評価、イベントツリ−評価の中で依存性を考慮して解析を行った。後者については、NUREG-1150内で採用されたβ-factor法を用いて解析を行った。
保守・点検の取扱い
 保守による系統の非信頼度は、下記の計算式を用いて評価する。

  Pm=Σ(fm・Tm)

 Pm:保守による非信頼度
 fm:メンテナンス頻度
  (評価対象機器の故障率の10倍とする)
 Tm:評価対象機器の平均修復時間

 また、点検による系統の非信頼度についても、同様の方法で評価する。
人間信頼性解析手法
 本評価は、事故前と事故後の運転員の操作におけるヒューマンエラーを考慮している。ヒューマンエラーの評価は、NUREG/CR-1278のデータベース8)、THERP手法及びNUREG/CR-4772 9)のTime Reliability Curveを用いた。
 また、万一、ある機器が故障しても、時間的余裕が十分にある場合は、当該機器を修復し、機能を回復させることが可能である。このため、本評価では、非常用ディ−ゼル発電機等についてこの修復効果を考慮した評価を実施している。なお、機器の機能回復失敗確率は、下式を用いるなどにより評価する。

  Pr=exp(−T/τ)

 Pr:機能回復失敗確率
 T:機能回復に使用できる余裕時間
 τ:当該機器の平均修復時間

炉心損傷頻度評価手法
 作成したデータベースを基にフォールトツリー解析を行い、各系統の非信頼度を求めた。次に、フォールトツリー解析等で得られた値を、イベントツリ



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