第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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喪失は、軽水炉で実施された先行のPSA評価結果1)-3)から炉心損傷に対し、支配的なシーケンスとなる可能性があるため、評価対象とした。また、評価対象となる運転実績年数は、昭和54(1979)年から平成4(1992)年までの13炉年とする。
 また、レベル1PSAの評価範囲は、プラント起動からプラント停止までの間の、給水系による除熱が可能な領域での炉心損傷頻度の算出までとし、それ以外の領域での炉心損傷頻度の算出は、停止時PSAの評価範囲とした。
 レベル2PSAの評価範囲は、炉心損傷後の格納容器破損確率の算出及び放射性物質放出挙動評価までとした。

8.5.3 レベル1PSA
(1)レベル1PSA評価手法
 「ふげん」におけるレベル1PSAを行うため、最初に、評価の対象とすべき内的事象における起因事象を選定した。選定した起因事象について、炉心損傷を防ぐために必要な安全機能を摘出し、各安全機能の成功基準を決定した。
 次に、各安全機能の成功基準に基づき、イベントツリーを作成した。イベントツリーの分岐確率を求めるため、機器故障率等のデータベースを作成し、フォルトツリー解析を行った。
 そして、イベントツリー解析により、炉心損傷に至る可能性のある事故シーケンスとその炉心損傷頻度を求めた4)
起因事象の選定及び発生頻度の算出方法(運転経験データの反映)
起因事象の選定
 「ふげん」では、過去に、効率的な保守点検方法、及びプラント信頼性向上のための効果的な設備改善案を検討するため、頂上事象を“定格運転中に発電端電力が0になる”とした設備機器の信頼性評価を実施した5)
 そのため、本評価では、これらの検討結果及び先行のPSA例における起因事象を参考に、プラントリスクへの影響(崩壊熱の除去機能の状況が炉心損傷に与えるメカニズム)の観点からグループ化(初期事象発生後のプラント応答が同様になるものをグループ化)し、起因事象を選定した。起因事象及びその発生頻度を表8.5.2に示す。起因事象を選定するにあたり、「ふげん」の特徴を以下のように反映した。

(イ)炉心を冷却する原子炉再循環系は、2つの独立したループで構成されているため、1つのループに配管破断事故が生じた場合、破断ループと非破断ループで異なる冷却系統や除熱系統が作動することが特徴である。これを起因事象の中ではなく、イベントツリーの展開において考慮した。
(ロ)減速材に重水を使用していることを起因事象に反映した。「ふげん」特有の事象として、「減速材温度の異常な上昇」及び「重水配管破損」が考えられる。これらの事象は、直接炉心損傷に至らないが、「ふげん」特有設備の異常により炉停止に至る可能性があるため、これらをグループ化し、「重水系の異常」として起因事象に選定した。
(ハ)「ふげん」は、圧力管型炉特有の入口管、上昇管、圧力管といった小口径配管を多く有しているため、これらの配管破断を適切に考慮する必要がある。これに関しては、後述するとおり、小口径破断と同様な成功基準となるため、「小LOCA」の起因事象にグループ化し、発生頻度設定の際に考慮することとした。
発生頻度の設定
(イ)冷却材喪失事故(LOCA)の発生頻度
 LOCAの発生頻度の設定について、一般配管と「ふげん」特有配管(圧力管及び入口管・上昇管)の破断発生頻度の算出方法を以下に述べる。
(a)一般配管破断発生頻度
 一般配管は、基本的に軽水炉と同様な配管構成となるため、日米軽水炉(特にBWR)及び「ふげん」の運転実績(合計約520炉年)により発生頻度を算出した。
(b)「ふげん」特有配管破断発生頻度

表8.5.2 起因事象の発生頻度




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