第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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切替等のATR特有の運転操作やプラント挙動を学習し、訓練できることを重点に置いて選定している。
 なお、「ふげん」の主な特徴である蒸気ドラムを含めた冷却系は、実機と同様に2ループ構成となっている。
プラント動特性モデル
 プラント動特性モデルは、図8.4.56に示すように、炉心、蒸気ドラム、再循環系を含む原子炉冷却系モデル、タービン・発電機モデル、非常用炉心冷却系等の非常系モデル、重水・ヘリウム系や燃料の燃焼に伴う長期的な反応度補償のため、重水中に液体ほう酸を注入するホウ酸供給系等のATR特有系統のモデル、及びタービン制御、原子炉出力制御等の制御系モデルで構成している。同図中の二重枠で示したモデルは、ATR特有の系統に対応している。
特性評価
 シミュレーションモデルの特性は、実機起動試験時に行ったプラント動特性試験(タービントリップ試験、蒸気ドラム水位設定変更試験等)の実データを用いて比較、評価した。
 タービントリップ時のシミュレーション結果と実データの比較を図8.4.57に示す。この事象は、原子炉が、タービントリップによりスクラムする事象であり、冷却材中のボイドが、原子炉スクラムにより減少するため、蒸気ドラム水位は低下する。しかし、蒸気ドラム水位は、再循環ポンプの自動トリップにより徐々に回復する。タービンバイパス弁容量が25%であるため、蒸気ドラム圧力が、一時的に上昇するが、原子炉出力の急速な低下により、蒸気ドラム圧力は徐々に低下する。図8.4.57で示すように、このような過渡事象に対しては、シミュレーション


図8.4.56 プラント動特性モデルの構成


図8.4.57 タービントリップシミュレーション結果の例


結果と実データがほぼ一致しており、良好な結果が得られた。
 シミュレーション精度の評価基準は、ANSI (AmericanNational Standards Institute:米国国家規格協会)の基準(ANSI/ANS-3.5-1985 Nuclear PowerPlant Simulators for use in Operator Training)に従って評価した。その結果、原子炉出力、再循環流量、蒸気ドラム圧力等の主要パラメータの静特性は±2%以内の精度であった。
(6)FATRASを用いた学習・訓練
 FATRASでの学習は、コンパクトシミュレータの利点を活かし、学習者各々の運転知識レベルに合わせ、学習者とインストラクターのマンツーマンの指導により行っている。運転員は、通常運転時のプラント特性、軽微な異常時のプラント特性及びインターロックの学習から始めることができ、個人の能力



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