第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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・ステップ3:適応度に応じた確率で、各染色体の選択交配を行う。図8.4.50に示すように、選択交配は、染色体をある決まった位置で2分割し、これを他の染色体とたすきがけにすることにより、次代の染色体を生成する。これにより、適応度の高い染色体の遺伝情報が、集団中に広がっていくこととなる。
・ステップ4:指定された世代数分にこの処理を繰り返す。
 従来の最適化アルゴリズムは、探索範囲が狭く、初期状態が局所解近傍にある場合、局所解に陥ることを回避することが難しい。GA法では、複数の染色体からなる初期集団からスタートするため、解の多様性が確保されていること、解は確率的に生成されることから、広域探索能力に優れており、局所解の発生を回避しやすい。このため、取替炉心設計のような離散的な解を持つ、非線型組合せ問題に対して極めて有効であるといわれている。
)焼きなまし法
 焼きなまし方法は、統計力学において、溶融状態にある物質を、冷却して結晶状態に到達させるプロセスからヒントを得たアルゴリズムである。このアルゴリズムは、局所解に陥るのを防ぐために、山登り法に確率的な遷移を導入している。このため、SAは、GA処理における局所解へ陥る可能性を、更に低くすることができると考えられる。
評価関数
・計算ロジック
 ARPSの計算ロジックは、最適化手法であるGA及びSAだけに依存するのではなく、「ふげん」で培ってきた炉心管理実績から得た知見を追加することにより、高精度の炉心探索能力を持っている。各計算ステップで行われている計算ロジックは、次のとおりである。


図8.4.50 遺伝的アルゴリズムの計算モデル

(a)初期炉心の生成ロジック:初期炉心パターンは、炉心内の燃料をランダムサーチにより取出し、取出した位置に新燃料を装荷することによって作成される。
 最初に、ARPSは、ステップ1に示す式(1)及び(2)によって、絶対新燃料装荷位置を決定する。ARPSは、絶対取出燃焼度を超える燃料及び指定取出燃料を選択し、乱数とターゲット燃料の装荷位置の重み係数の関係から新燃料を装荷することとなる(図8.4.51参照)。
 次に、ステップ2に示す式(3)及び(4)から、ARPSは、残りの新燃料装荷位置を選定する。乱数とターゲット燃料とその周辺の燃料の重み関数の関係から、残りの新燃料装荷位置が選定される。
 これにより、新燃料は、炉心の反応度が低い位置に装荷され、取出燃料の燃焼度は、周辺燃料よりも相対的に高いこととなる。

・ステップ1:絶対新燃料装荷位置の決定

Wl1=Wini×Wi(Nf,Ri)×W0(Nf,R0) (1)

Wl1 ≧ Nran (2)

Nf :隣接新燃料体数
Nran :乱数
Ri :内側領域の重み係数
Ro :外側領域の重み係数
Wi :内側重み係数
Wo :外側重み係数
Wini :初期重み係数
Wl1 :絶対新燃料装荷の重み係数


図8.4.51 絶対新燃料装荷の計算モデル



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