第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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 ARPSの計算フローを図8.4.49に示す。このシステムは、大きく3つの部分(ランダムサーチによる新燃料装荷、遺伝的アルゴリズムによる新燃料装荷及び燃料シャッフリング並びに焼きなまし法による燃料シャッフリング)に分けることができる。ARPSの計算フローは、以下のとおりである。
 第1に、ARPSに初期データを入力する。代表的な入力変数は、新燃料装荷体数、シャッフリング及びスワッピング燃料体数、計画運転日数、新燃料装荷禁止位置、重み係数及び判断基準値、遺伝的情報、初期炉心の燃焼度分布等がある。
 第2に、ARPSは、ランダムサーチにより数千の新燃料装荷パターンを作成する。
 第3に、高い適用度の新燃料装荷パターンを選定するため、新燃料装荷と燃料シャッフリングを組み合わせたGA処理を、ARPSに組み込んだ。これは、新燃料装荷と燃料シャッフリングを別々に評価する計算フローよりも、それらを組み合わせた計算フローの方が、より適用度の高い炉心を構築できるものと考えたからである。GA初期炉心はランダムサーチにより得られた新燃料装荷パターンを基に生成される。GA初期炉心は、GAシャッフリング処理をしたあと、あとに示す最適化関数により評価される。
 第4に、GA処理において評価された炉心データは、SA処理に移行され、燃料シャッフリングを行い、最適化関数によって評価される。
 最終的に、ARPSは、いくつかの適応度の高い炉心を出力し、炉心管理者は、この中から望みの炉心を選定することができる。この選定にあたっては、実効増倍率、出力ピーキング係数、取出平均燃焼度、領域出力及びMOX燃料装荷位置が考慮される。選定された適応度の最も高い炉心データは、3次元核・熱水力結合計算コード:POLESTARにより、燃焼末期の燃料燃焼度が評価される。
サーチアルゴリズム
)遺伝的アルゴリズム
 遺伝的アルゴリズムは、ダーウィン進化論の原理に着想を得たアルゴリズムである。また、GAは、典型的な確率的探索、学習及び最適化の一手法である。ARPSでは、この過程を模擬し、最適化問題に対して下記の処理を行う。
・ステップ1:必要な個体数だけ染色体(問題に対する解)をランダムに発生させ、初期集団を生成する。これらの染色体は、遺伝的情報から形成される。ここでいう遺伝的情報とは、問題に対する解を形成する個々の要素をいう。取替炉心設計において、染色体は、炉心パターンに相当し、遺伝的情報は、個々の燃料取替情報に相当する。
・ステップ2:生成された各染色体の適応度を評価する。取替炉心設計においては、実効増倍率、取出平均燃焼度が高く、ピーキングの低い炉心が、より適応度の高い炉心となる。

図8.4.49 ARPSの計算フロー


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