第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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8.4.5 燃料交換作業支援システム
(1)はじめに
 「ふげん」における燃料交換作業は、取扱う物品が核燃料集合体であるため、安全上重要な作業であり、工程上もクリティカルとなっている。燃料交換作業は、4種類の取扱機器を並行に操作し、燃料、シールプラグ等の数種類の物品を取扱い、それぞれについて所在管理を行っている。このため、燃料交換作業の計画作成や帳票管理、設備の効率的な運用は、熟練運転員に蓄積された多くの経験的知識を必要としていた。
 以上の点を考慮して、燃料交換作業の円滑化、高度化及び運転員の負担軽減を図るため、AIツール「ΦNET」(Factory Automation Intelligent NETwork Control Systemの略)を応用し、燃料交換実績と熟練運転員の知識やノウハウを計算機に取り込んだ燃料交換作業支援システムを開発した。本支援システムの主な機能は、燃料交換作業計画の立案支援、交換作業の機器操作、確認事項のガイダンス及び管理帳票類の作成である。
 本支援システムの開発により、交換作業計画立案の時間を1/6に短縮するとともに、経験の浅い運転員が、熟練運転員と同等の燃料交換作業を実施できるようになった。
 本支援システムの開発は、平成元(1989)年から開始し、第16回燃料交換作業時(第9回定期検査:平成2年12月14日〜平成3年5月23日)にオフラインシステムでの機能確認試験を行い、所定の機能を満足することを確認した。その結果を反映して一部の機能を追加し、第17回燃料交換作業(平成3年計画停止:平成3年10月31日〜12月17日)よりエンジニアリングワークステーション(PFU・Σstation−230)によるオフライン燃料交換作業支援システムの運用を開始した。その後、5回のオフラインシステムによる燃料交換作業支援システムの実績を反映し、第22回燃料交換作業(第12回定期検査:平成6年12月24日〜平成7年5月18日)で実機の燃料交換設備の制御系への適用を行い、システムとして完成した。
(2)燃料交換作業の概要
主要設備の機能と構成
 「ふげん」の燃料交換設備の概略図を図8.4.38に示す。本設備は、燃料等取扱い物品の滞在する3か所の場所(燃料貯蔵プール、燃料交換プール、炉心)と4種類の取扱機器〔移送機、トランスファーシュ
ート(T/C)、燃料出入機(T/M)、燃料交換機(F/M)〕で構成される。
燃料交換作業の方法
 「ふげん」の燃料交換は、定期検査及び計画停止時に、炉心にある燃料集合体の約1/4(約60体)を交換または、シャフリングを行うという2つの取扱い方法がある。
 燃料交換作業は、燃料交換対象である圧力管より使用済燃料集合体、遮蔽プラグ(SH/P)シールプラグ(S/P)または、シャフリング燃料集合体の3種類の物品を燃料交換機にて取り出し、新燃料集合体、SH/P及びS/Pまたはシャフリング燃料集合体を装荷する。
 この交換の手順は、取り出しと装荷で異なり、また、定期検査時、計画停止時でそれぞれ異なる。
(3)ΦNETモデルの開発
ΦNETモデルの概要
 ΦNETは図8.4.39に示すように、対象となる物流システムを静的なモデル(設備モデル・シーケンスモデル)と動的なモデル(運用モデル)に切り分け、静的なモデルをベースとしてペトリネットを用いた


図8.4.38 燃料取扱設備と燃料貯蔵設備の構成



図8.4.39 ΦNETの構造



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