第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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(9)まとめ
 保守管理システムは、昭和54(1979)年4月からシステム開発に着手し、現在までに7システムの開発、改良及び運用を行ってきている。今後とも、運用環境及び計算機システムの環境変化に対応したシステムの高度化を図り、発電所の保守管理を中心とした業務を総合的に支援可能なシステムとして開発及び改良を進めていく。
 また、保守管理システムは、1980年度より運用を開始し、多くの保全データ蓄積を図るとともに、計算機化による発電所の業務管理の改善が行われた。以下にMMSの利用実績及び運用効果を示す。
)発電所の保守管理業務全般が、統合化されたオンライン処理により、管理の充実、業務の合理化が図れた。
)実証炉の設計に反映するための過去の故障・作業データの提供を行うことができた。
)故障データの統計・分析等により、故障しやすい機器・部品等の傾向を把握し、予防保全、信頼性向上対策等の改善に寄与した(例:発信器類、記録計等計装品の予防保全など)。
)予備品等の整理・管理が充実し、在庫状況の把握が容易となり、迅速な利用が可能となった。また、予備品の棚卸し作業も合理化できた。
)設備台帳データの整備により、設備機器の最新情報が容易に確認できることとなった。また、設備台帳データにより故障率等の算出が可能となり、故障の一般データとの比較が可能となった。
)長期的な保守費用の実績データに基づく、費
用の予測が可能となった。
)定期検査工事の積算処理が、正確かつ迅速に実施できることとなった。
)アイソレーション管理の計算機化により、アイソレーション計画・管理業務の合理化及びアイソレーション状態管理の強化・充実が図れた。

参考文献
1)磯村、岡田、他:“新型転換炉ふげん発電所の保守管理システムの開発と実績”、動燃技報、NO.74、(1990)
2)磯村、他:“新型転換炉ふげん発電所のアイソレーション管理システム”、富士通、VOl.44、(1993)
3)磯村、菅谷、他:“新型転換炉ふげん発電所アイソレーション管理支援システム”、FAPIG、No.160、(2002)


8.4.3 給水制御系ファジィ制御システムの開発
(1)概要
 ファジィ理論や、ニューラルネットワークといったソフトコンピューティング技術が、従来の手法ではうまく処理できなかった情報処理に関する問題の改善に役立ち始めて久しい。本件は、原子炉給水制御系へのファジィ理論の適用を通して、ファジィ理論の効果を実証した一つの例である。この研究開発は、昭和62(1987)年から平成2(1992)年の間にふげん発電所で実施したが、これは、実用規模の原子力発電所の主要な制御系にファジィ理論を適用した世界初の試みであった。
 ふげんの主要冷却系統を図8.4.14に示す。原子炉冷却系は、AループとBループの2つの独立した冷却ループに分かれており、蒸気ドラムは各ループに


図8.4.14 「ふげん」の原子炉冷却系及び給水制御系


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