第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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作業条件(系統状態、必要資源、作業場所等)、作業項目間の関係等をAI及びPERT手法を用いて工程の割付を行うものである。
 その際、工程企画データの作業項目における作業条件の背反チェックを行いながら、工程の割付を行う。作業条件は、エキスパートシェル(E-SHELL)で作成されており、知識源(KS:Knowledge-Sources)24個、ルール数329個で表現されている。また、割付後は、報告書作成機能でXYプロッタにより工程表の作表を行う。
)実績データ管理サブシステム
 実績データ管理サブシステムは、定期点検が実施されてから工程の進捗管理に使用する機能である。
 実績データ管理サブシステムでは、工程計画により、作成された計画工程を入力するとともに、実績データ(実際の開始日、完了日等)を入力し、実績工程データを作成する。また、実績工程表をXYプロッタに出力し、定期検査開始後の工程進捗管理及び工程会議等に利用する。
運用実績
 本システムは、「ふげん」における定期検査(第7回及び第8回定期検査)に使用された。その結果、原子力発電所等の定期検査工程計画・管理に充分有効であることが確認された。本システムの運用実績及び特徴としては、以下の項目がある。
)定期検査工程の標準化及びデータベースの確立
 システムの開発に先立ち、「ふげん」の6回の定期検査実績及び運転・保守の経験等を反映して定期検査作業の分析を実施し、「ふげん」の標準定期点検要領書の作成を実施した。この標準定期点検要領書内の点検項目、作業項目及び作業条件等の各データにより、標準定期検査工程データベースの構築を図ることができた。これにより、定期検査工程の標準化、定期検査工程データの一元管理が可能となった。
)定検工程作成及び工程管理業務の合理化
 各回の定期検査は、標準定期検査工程データベースからの点検項目を選択することにより、作業項目及び作業条件等が抽出され、定期検査計画工程の割付・立案が行われる。
 また、工程表の出力は、主要工程及び詳細工程表等がXYプロッタにより短時間に出力され、今までの手書きに比べて大幅な省力化が図れた。
)工程割付の自動化及び変更の迅速化
 定期検査工程の割付により、各点検項目内の作業項目が有する作業条件及び作業項目間の関係等をAI
及びPERT手法を用いて自動割付を行うことができ、定期検査工程管理業務の簡易化が図れた。また、工程の変更が生じた場合に迅速な対応が可能となった。
)定期検査工程の予測の容易化
 工程の自動割付機能により、各種点検項目の組合せによる工程の作成(定期検査工程のシミュレーション)が容易になり、定期検査工程短縮化等の検討の効率化に有効である。
)容易な定期検査工程進捗状況の把握・管理
 実績管理機能により、各点検作業の進捗状況を入力し、定期検査工程全般の進捗状況の把握・管理が容易に行うことができ、実績工程表等の作成が可能となった。
 本システムは、2回の定期検査(第7回、8回)に利用してきたが、いずれの場合も問題なく、工程計画の立案から工程管理まで行うことができた。特に「ふげん」の最短工程であった第7回定期検査(解列から並列まで73日間)の短縮化の検討に有効であった。
 なお、本システムは、昭和63(1988)年7月に東京晴海にて開催された「AI88」に出展し、各方面から注目を集めた。
 しかし、この当時のAIシステムは、定期検査ごとに変化する作業条件、環境並びに改造工事等の情報を知識データベースに追加・更新するのに、多大な労力と費用を必要とした。このため、平成2(1990)年の第9回定期検査から、AI機能は使用しないこととし、工程割付及び作図を行う機能のみを利用してきた。また、平成8(1996)年の第13回定期検査以降は、パソコンによる工程管理システムを利用して工程管理業務を行っている。
(5)予備品管理システム
システムの概要
 予備品管理システムは、「ふげん」の設備・機器に使用する予備品等(予備品、貯蔵品、消耗品及び工具・備品等)の在庫管理を行うために開発したシステムである。
 「ふげん」は、設備の点検及び突発的な故障等に対し迅速な対応を行うため、設備の取替部品を一定数量予備品として常備している。予備品の常備数量は、機器の重要度、取替頻度、機器の設置数量及び製作納期等を考慮し定めているが、「ふげん」では品目にして約1万点もの予備品等があり、手作業による管理は困難であった。
 そこで、1979年度のMMS開発当初から、基本機



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