第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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表8.3.13 原子炉冷却系の系統化学除染における総括除染係数


線量当量率は、両ループとも除染前の1/20に低下しており、除染による線量低減効果は顕著であった。
)系統全体の除染係数
 一方、上昇管及び蒸気ドラムを含めた原子炉冷却系全体のDFは、Aループ16.4、Bループ6.5であった。この値は、上記RCP分解点検に直接影響する機器配管のDFと比較して小さいが、これは、上昇管及び蒸気ドラムのDFが4程度と小さかったためである。
 Aループで高いDFが得られているが、これは、Bループでの経験を踏まえて、第1サイクルの還元除染工程の時間を、6時間から12時間にした効果である。
)機器単体の除染係数
 機器別のDFは、Aループにおいては入口管が最大で37.9、蒸気ドラムが最小で5.0、Bループにおいては同じく入口管が23.8、上昇管が最低で3.2である。機器別の単純平均値は、Aループが17.9、Bループは10.8である。
 系統化学除染により、機器分解点検にかかわる部位については目標値であるDF10は十分達成できた。
 なお、入口管をはじめとする炉心入口側においてDFが高く、出口側である上昇管及び蒸気ドラムにおいて低かった要因は、長期にわたり継続している水素注入(原子炉冷却系機器配管の応力腐食割れ感受性低減対策として昭和60年に開始)の結果、入口管部側と上昇管部側における酸化皮膜性状が違ってき
ていたためと考えられる。これは、水素注入により、過剰な還元状態において、水の放射線分解により炉水中の溶存水素と溶存酸素や過酸化水素の濃度が、炉心入口側では低く、出口側では相対的に高くなっていることにより、酸化被膜中のCr酸化物の化学形態が異なっているものと考えられる。すなわち、入口管部側においては、Crが、蓄積しやすい形態のためにCr含有率が多く、上昇管部側においては、Crが、蓄積し難い形態のために相対的にCr含有率が少なく、Feが多くなっていると考えられるからである。
 以上、系統化学除染においては、長期水素注入環境下で生成したクロム含有率の高い酸化皮膜を有する部位に対し、酸化除染工程から始めるHOP法を適用することによって、十分な除染効果を得ることができ、HOP法の有効性が確認できた。
被ばく低減効果
 RCP及び下部ヘッダ逆止弁の分解点検作業における除染による線量当量低減効果は、除染を実施しない場合の予測値と、除染後の実績値とを比較することで評価するものとし、その結果を図8.3.30に示す。
 図8.3.30から分かるように、RCP等の分解点検作業における総線量当量は、Aループの場合、除染しない場合の予測値3.3人・Svに対して、除染設備の設置、撤去作業を含む除染作業に対する実績値は、0.33人・Svであり、1/10に低減することができ、3.0人・Svの低減効果をもたらした。同様にBルー



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