第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

帯

8




図8.3.18 系統化学除染の開発と適用実績

8.3.18に示す。
 最初の系統化学除染においては、除染剤にEDTAを主成分とするキレート系還元除染剤〔クリデコン203:KD-203法、 (株)栗田エンジニアリング製〕を選定し、除染性能、材料健全性の確認試験、系統除染システム設計等を行い、実機適用の見通しを得た。平成元(1989)年及び平成3(1991)年の第8回、第9回定期検査においては、供用中の原子力発電所としては我が国で初めて、原子炉冷却系のA及びBループで原子炉再循環ポンプの分解点検や原子炉冷却系の応力腐食割れ(SCC)予防対策として大規模な材料取替え工事が計画され、それらの作業に係る被ばくの低減を図るため、原子炉冷却系統全体の系統除染を各ループに適用し、大幅な被ばく低減化に成功した3),5),17)

 その後、「ふげん」においては、原子炉冷却系機器配管の応力腐食割れ(SCC)防止対策として、原子炉冷却水への水素注入を長期間実施してきたため、化学汚染により古い酸化被膜が除去され、新たに生成する酸化被膜中の金属元素に占めるクロム含有量が、14%〜30%と、1989年当時のクロム含有量10%以下に比べて増加した。その結果、第8回、第9回定期検査に使用したクリデコン203還元除染法では除染効果を得ることができないことが確認された。このため、平成11(1999)年及び平成13(2001)年の第15回、第16回定期検査においては、原子炉冷却系の再循環ポンプ及び下部ヘッダ逆止弁の分解点検作業に伴う被ばく低減対策として、長期間水素注入を実施している原子力発電所に適用できる除染法を検討し、除染性能、材料健全性への影響、廃棄物発生量、経済性等を考慮して、ヒドラジン-シュウ酸-過マンガン酸カリウムを使用した酸化還元除染法(HOP法:Hydrazine Oxalic Acid and Potassium Permanganate)を選定した。
 国内メーカー〔(株)日立製作所と栗田エンジニアリング(株)〕は、除染剤の開発にあたり、KD-203除染法の開発で得られた知見、成果をベースに、HOP法を開発し、除染性能確認試験、材料健全性確認試験及び系統除染システム設計等を行い、それらの結果を踏まえて策定した除染計画により、「ふげん」にこれを適用し、その有効性を実証、除染手法として確立した。
 ここでは、KD-203還元除染法の開発実績を踏ま


図8.3.19 原子炉冷却D-RCP吐出管(Bループ)の線量率推移


帯
330

前頁

目次

次頁